お目覚め
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『っ……ここは?……』
目覚めると、フェルが知らない場所でベットに横たわっていた。所々痛む体に悩まされながら、ゆっくりと起き上がる。
「おや、お目覚めになられたのですね」
辺りを見回していたら、一人の女の子と目があって、目覚めたことをとても嬉しそうに喜んだ。
『アンタは……誰なんだ?』
「あぁ、自己紹介がまだでしたね。私は憤怒の王の現し身、リシュナと申します。以後お見知り置きを」
その名を聞いて、フェルはすぐに『塔』の権能を発動しようと同時に、彼女は丁寧に腰を折ってお辞儀をし、まるでこの場の空気感を読まない様に意気揚々と名乗った。
「愚かなる空想に憤怒を」
「カフジエル!どうだ?フェルは見つかったのか?」
息を切らして、額には大粒の汗が滲み出ていた。
今、カフジエルとベアルはいなくなったフェルを探すために、町中を走り回っている。
「こんだけ探しても見つからないってことは、もう教会に居るんじゃないの?」
「そうだと……良いんだけどなぁ」
尻を壁に寄りかけて、膝に手をつき息を整えようとする。
「なぁカフジエル。どうでも良いんだけどさ」
「ん?なに?」
「お前、体力あり過ぎじゃね?」
「……どうでも良いわねぇ、そんな事」
カフジエルに冷たくあしらわれてしまったようだ。そんな会話を続けてるうちに、もう呼吸が整ったようだ。
「それじゃあ行くとしますかね…教会に」
「
「なるほど……魔境ではそのような状況になっているのですね。情報提供感謝いたします」
『……づっ、テメェっ』
今、何が起きたのかフェルには理解が出来なかった。憤怒の王の名を名乗った挨拶の時点で、フェルは臨戦態勢に入っていたが突如右腕が消えていたのだ……痛みも無しに。
『そもそも、俺は嬢ちゃんとは碌に話してねぇってのに、何で提供したことになってんだ?』
「……そう言うふうに、【過去】を改編しましたので」
何故、『憤怒』だけが能力をわざわざ二つに分けて、弱体化まで施す必要があったのか?
『勇気』?違う。あれは本来の使い方は回復の能力である。ただ汎用性が高いから攻撃にまで扱えるだけで、本来の『憤怒』の能力は……
『【過去】の上書き、かよ……こりゃあルシファーも欲しがる訳だ』
「少し訂正を、正確には自身以外のですね……」
合いの手を合わせるかのように、自身の能力の欠点を敵に教える、このことにフェルは疑問を感じる。
『どーして敵に弱点を教えるんだよ、嬢ちゃん』
残った片手を挙げて、反抗の意思がないことを示すフェル。その姿に納得したのか、口を開く
「あなたの持ってる権能は、『権能を破壊する権能』それ以外にもあるんでしょうけど、生憎その権能が効くのは権能のみ、王域技はおろか普通のスキルにも効果がないんでしょう?」
「一応、右腕を無かった事にしたけど杞憂だったかしら?」
『オイオイ、そこまで知ってんのかよ……そんなら【左腕】も消しとくべきだったな』
「何?それが何だって言うの?今消せれ……ば?」
彼女が能力を発動した、通常なら消える筈だ。先ほどの右腕と同じ様に、それなのにーー
「消えない?」
『合点がいったぜ、全部サマエルの受け売りだろ?だからこんなこともわからねぇ』
ミシミシと建物全体が、音を立てて崩れ始める。危機を察知し、リシュナは隠していた短刀を抜き出し、即座に首に目掛けて突き刺そうとする。
『遅ぇんだよ!!』
フェルの左腕が空をなぞる、その瞬間ーー
「【止まりなさい】」
たった一言で
『【呪言】!?しまっ……』
まるで石像のように、動かなくなってしまった。
「ーー危ないところだったわ、ありがと愛の『四卿』さん?」
「いえいえ、こちらこそです。貴女が【右腕】を先に消さなければ、私の権能は使えなかったので」
物陰から出てきた女性は、銀色の鎧を纏い肩には十字架が刻まれていた。
「今、コイツを殺せないの?」
リシュナが無邪気に聞くと、聞かれたらその女性は部屋の片付けをしながら
「無理ですね、殺す事はおろか傷一つ付けれないでしょう」
たくさんの瓦礫を抱えながら、そう答えた。
「ほら、見てください、貴女が刺そうとした短刀が首に着く寸前で停止しています。私の権能の弊害でしてね、停止したものに不用意に近づくと、同じ様に止まってしまう為、触れることも出来ません」
「そう言うことなんですね。分かりましたありがとうございます」
瓦礫の撤去も終わり、次は散らばった小物の整理を始める。
「もう一人の私がこちらに来ているのでしょう?事情を聞くに、『憤怒』が欲しいらしいですよ?」
「そうですね、どうするんです?相手に一人相当の手練がいますよ?」
「可能なら交渉、出来なければ実力行使ってところかしら。早くしないと、私もやらないといけない事があるんですよ……」




