表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/79

傷跡

よろしくお願いします

 『龍災』の会議が終わり、静まり返った部屋の中でカフジエルとルシファーの二人が話していた。


「カフジエル殿、『怠堕』はどうだ。問題なく動いているのか?」


「残念ながら、あの日以降私から『怠堕』の権能を感じれなくなってしまったの」


 ちゃぶ台をたった二人で囲む姿は、何とも寂しく見えた。ルシファーが困った顔をして


「……つまり、『怠堕』に頼った戦いは出来なそうだな」


「そうなるわね。ごめんなさい」


「いや、別に貴女の所為ではないでしょう……それにしても違和感があるな、フェルと言ったか?お前の従者の名は」


「えぇそうよ、ちょうどベアル達が来る少し前に私が見つけたわ」


 口元を隠す理由はわからないけど。とカフジエルが呟くが、ルシファーはすっかり別のことを考えていた。





(おかしい、『怠堕』の権能は六王(我ら)の中でも歪な物だったはずだ)




 正確に言えば、『怠堕』は他の王のように不特定多数の人物が扱えるような仕様ではなく。怠堕の王個人にだけしか機能しない能力なのだ。


「まぁ、難しく考えても意味はないわ。それじゃあ答え合わせは『龍災』の後で」


「……そうだな、くれぐれも死ぬんじゃないぞ?“怠堕の王”が不在の今、()()とは言え貴女も“王”の一人なのだから」


「それくらい……言われなくてもわかってるわよ」


 私の目的のためなら、手段は選んでられない。ちょうど良い時に『龍災』が来た。それならもしかしたら……


「貴方は会いに来てくれる?……ししょー」









 帰りの馬車は結構気まずかった。カフジエルはダンマリして、フェルは空気を読んで同じように黙ったまま、俺はそれどころじゃなく、ずっと考え込んで傲慢の国を後にした。








『おい、起きろ坊主。もう着いたぞ』


 頭に直接響いてくる声。聞き流せないため、目覚ましよりもちゃんとしている。


「んー、もう着いたのか?」


『まったく、俺が馬車を運転してる時に、お嬢と二人揃って寝やがって』


 ブツブツと文句を言い放つフェルを後にして、窓に目を向ける。見慣れた景色がそこに広がっていた。


「なんか……復興早くね?」


 そう、本来ならあり得ない。あの惨劇からまだ三ヶ月少ししか経ってないというのに、魔法がある世界とは言え早すぎる。


「そもそも、何で草木がこんなに生えてるんだ?」


 俺が見た時は、全てのありとあらゆる生命が消え去って、文字通り草一つ生えていなかった。犠魂剣によって、人も植物も何もかも消え去った。その筈なのに、まるで()()()()()()()()()草が生い茂っていた。


 まるで、時間を遡ったかのように。



「なぁ、フェル。三ヶ月前何があったか覚えているか?」


『ん?そりゃあ、お前が確か地上に出たいって喚いたんじゃないか?』


「その後!何があったんだ?!」


 俺はフェルに八つ当たりのような口調で、言い寄っていた。だがその後のフェルの言葉で、俺は絶句した……


『……何も無かったけど?』











「んーーーー、やっぱり物語ってのは良いねぇ」


 古い本棚と何回も読んだのであろう、傷んだ本が沢山ある部屋の中である人物がいた。


 その表情は、幸福と驚きに満ちていた。その人物は読み終わった本を棚に戻し、ゆっくりと背伸びをした。


「はー、本当にみんな、よくやるよねぇ。いつ自分が死ぬのかわからないってのに」


「ん?何?『何もしてないお前がいうなって?』そりゃあひどい言われようだね、まぁ事実だけど……」


 その人物は億劫そうに頭を掻いて、新しい本に手をかける。


「さて、僕の出番もそろそろかな?沢山用意したから楽しんでくれると良いなぁ」


 その本をパラパラとめくって、文字が伝ってある最後のページに辿り着く。


「君はどんな冒険録(お話し)を、僕に見せてくれるのかな?」


 その人物は珍しく笑っていた。そして続きが気になるのか、何度も何度も同じページを行ったり来たりしていた。そのほとんどは白紙で、所々破いたような跡もあった。


 その人物が大切そうに、扱っていた本のタイトルは『黒鉄戦士の冒険録』


ーー断言しよう。世界は彼を中心に回っていた。


「んーー、これは、僕も挨拶ぐらいはしたほうがいいのかな?」


 そっと、椅子から腰を落として、かなりボサボサな白色の髪の毛を後ろで結っていた。


 自信満々に、はっきりと申した。


「確か、“六王”?だったっけ?まぁどうでもいいか、僕は“怠堕の王(ベルフェゴール)”だよ!よろしくね!」


 最後の王が動き出した。ただ物語を面白くするためだけに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ