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憤怒の片割れ

 “魔境”地下六階に位置する、傲慢の国。その一室では、ある人物が頭を悩ませていた。


「……早すぎる、前回からたった数百年程度しか経っていないと言うのに、こうも早く『龍災』がやってくるだと」


 ベランダに立って、不機嫌そうに変わり映えの無い空をじっと見つめている。


「それに、“星”の連中も動き出す」


 握っていた拳に強く力を込める


「これもあなたの差し金だと言うのか、“悲嘆”よ……」








「結構、大変だったんだな……お前」


 カフジエルの話を聞いて、俺はかっこいいと思ってしまった。


 彼女は、どこか懐かしむ様な目でこちらを見つめてきた。


「私は“ししょー”に生かされたの、だからあの時笑って死んだあの人の訳を知りたい」


 その目には確かな信念があった……それと同じくらい、悲しみもあった気がした


 その時何も無い空間から、一通の手紙が落ちてきた。


「差出人は……」

 俺は名前を見て固まってしまった、差出人の所にあの男(ルシファー)の名があったから。



『急遽、この様な形で報告する事をどうか許してほしい。この度は、異例の『龍災』が発生する事を報告する各自対応をする事、そして今回の『龍災』には“星”も動く。詳しい事は後の“会議”で話すつもりである。ーー追伸、カフジエル殿よあの剣はまだ持っているか?この度の『龍災』ではそれが鍵になるかもしれない。』




「……ごめん、何言ってんのかさっぱりだわ」

 カフジエルが握っている手紙を見たが、殆ど理解が出来ないものばかりだった。


「そう……ずいぶん早いのね今回の『龍災』は」

 ただカフジエルは、とても悲しそうに手紙を握りしめていた。




 二人で一緒に食事をとっていると、ふと何かを思い出したかのように彼女が話しかけてきた。


「あなたにね、話しておきたいことが結構あるの」


「あ、はい、どうぞ」


「ありがと」


 短く答えて、手に持っていたスプーンをお皿の上に置いて、この少し緩い部屋に置いた時の間抜けた金属音が少しだけ響いた。


「……あなたの力はね、半分消えてるのよ」


「はい?」


 スプーンと同じくらい間抜けた声が、同じく部屋全体に響いた。


「少し説明するわね、元々憤怒の王(あなた)の力は半分に分けて保管していたの」


「片方は“勇気”の力もう片方は“憤怒”として、そのどちらも傲慢によって著しく弱体化されしているの」


「その結果“勇気”は殆ど機能せず、“憤怒”に限っては使用はおろか発動すらままならないものになってしまった」


「待って待って、全然わかんないんだけど」


 突然の膨大な情報に、困惑を続けるしか対応ができない。でもカフジエルがとても大切な事を話している事はわかっている。


「まとめるわ、あなたは今もう一つの力を取り戻さないと『龍災』に勝ち目が無いとあいつ(ルシファー)が判断したの、だから取り戻しにいくのよ、憤怒の王の力を」


 そう言って来たカフジエルは、グッと親指を立ててアピールして来たが、はっきり言うと終始分からないことが多すぎた。


ーー大丈夫かよこれ




 とある珍しい者を崇める小さな国に、その人物はいた。


「……勇気ある行動に賞賛を(愚かな空想に憤怒を)


 教会の祭壇前で、負傷した兵達を治療しようとか細い声を残念ながら“奇跡”は起きずその場で燻っているだけであった。


「私じゃ……ダメなんですね」


 両手は震えて、動悸は激しくなっていき眩暈を通り越して、何日も寝ていないため目もほとんど見えなくなってきていた。


「私が……やらなきゃダメなんです」


 震える手を自ら叱咤して


「私じゃなきゃ……ダメなんです」


 朦朧とする意識を起こして


「私は……」


 教会の扉を開く、年季が入り、軋むように錆びついた音が聞こえてくる。開けるのに時間がかかったが問題ない。


 髪の毛が激しくなびく程の風が吹き荒れ、血と砂の匂いが鼻に不快感を与える。


「憤怒の王の現し身、リシュナ・セファルの名においてこの度の『龍災』に勝利を!」


 この夜と蛇の国で、物語は動き出す。


 ーー新章、希望と憤怒に真実を






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