私は、知りたかった
お願いします
「おい、厨二病発言やめてくれ、こっちが恥ずい」
「よし、表出ろや!」
剣を肩に担ぎ、目の前の少女が一歩踏み出す。
「ごめんて、ごめんて」
慌てて両手を挙げて降伏のポーズ。
その後、少女は決まりが悪そうに頭を掻きむしった。
「…言い方が悪かったわね。怠堕の王──私の能力の説明をしようと思ったの!」
「などと、厨二病容疑者がほざいてお、りぃ!?」
「《希望強化》」
その瞬間、空気が変わった。
全身が光に包まれた彼女が、次の瞬間目の前に迫っていた。
ものすごい速度で飛び込んできたその脚が、容赦なく彼を蹴り上げた。
空中を数回回転し、衝撃音と共に、地面に叩きつけられる。
そして──
「ししょーっ!」
倒れたのは、黒い鎧を身にまとった“彼”だった。
その鎧は砕け、内側から真紅の血が滲んでいた。
世界を滅ぼさんとする龍の一体に、命と引き換えに勝った彼の姿。
その事実に、カフジエルは言葉を失った。
「あっ…」
あまりにも呆気なく、そして、あまりにも確かに──彼は倒れていた。
彼女が駆け寄ると、“ししょー”は微かに目を開け、ゆっくりと笑った。
「ゴホッ…なんだ、カフジエルか。無事で、よかった……」
「よくないよ!全然よくない!ししょーが…!」
彼の下半身は既に存在せず、左手も消えていた。
血が止まらない。明らかに致命傷だった。
だが、彼は穏やかな表情のまま語った。
「いいんだよ……きっと、また会えるさ……いつか、な」
彼の大きな手が、雑に彼女の頭を撫でた。
その手はもう、震えていた。
「死なないで…お願いだから、死なないで…!」
泣きながらすがりつく少女の肩に、血まみれの腕がそっと回される。
耳元で、静かに、あまりにも優しく囁いた。
「……やっと、君を救えたんだ。……それだけで、充分なんだよ」
「なんで…」
「君にこの世界を、生き抜いて欲しいから剣を教えた、俺は君に笑って欲しいから、笑い方を教えた、君が一人にならないように、楽しい事を、沢山教えた…君はもう一人で歩いて行けるさ…な?」
彼女の目に、涙があふれる。
「……だからもう、大丈夫だろ……カフジエル。君は、もう一人じゃない」
「……やだ、やだぁ……!」
「……俺のことは……忘れてくれていい。君が、進んでくれるなら……」
そして、ぽつりと──
「……あぁ、待ってるさ。あの場所で。あの地下の牢獄で……お前を、な」
彼女の名を呼ぶ声がかすれていく。
「ねぇカフジエル、……愛してる」
そして、そっと額に口づけを落としたその瞬間、“ししょー”は微笑んだまま──動かなくなった。
静かに差し込む光が、彼女を優しく照らした。
その時が、『希望の王』の誕生の瞬間だった。
だが、その希望は──
彼女にとって、あまりにも痛すぎる代償だった。
その後、彼女は地獄を歩くことになる。
それでも、あの笑顔を胸に抱いて──
不死と復讐の記録もお願いします




