3話 ユリィの実力
「私が戦う!?」
「ええ、そうです。ユリィ様はこの地にて、魔族を滅ぼすべく呼ばれたのですよ?」
何を当たり前のことをいっているのか。というような顔でヘルルクはユリィを見る。
「だ、だって私戦ったことなんて…」
「はい。ですからこれから稽古をさせて頂くのです。」
ーーぐぬぬ…
翌日の早朝ー。
「ようこそお越し下さいました。私、この稽古場で指導をしているレヒラーで御座います」
ーー今更だけど、なんでみんな私に丁寧な言葉使うんだろう。私ってそんなに地位高いのかな?
稽古場は思っていたよりも大きく、学校の体育館以上はあった。ここもまた、天井が高く装飾はとても豪華だった。相当金がかかっているだろう。
「まず今日は、この稽古場で一番の実力者であるザクくんと手合わせしてもらいます。」
「ええ!?無理ですよそんなの!私剣を握った事さえも…」
「もちろん、木刀でやりますので安心して下さい。」
ーーそういう問題じゃ…
そう思ってレヒラーを睨むが、期待を孕むその目にユリィは黙るしかなかった。
しばらくして、稽古場にユリィvsザクの噂を聞きつけたのかたくさんの人が押しかけて来た。
「期待の新星、転生者ユリィだってよ!」
「しかも相手は稽古場最強のザクらしいぜ」
「これは見逃せないな!」
ーー勘弁してほしい…。こっぴどくやられて、冷たい目を負けられるのが目に見える…
稽古場で一番大きいと言う部屋の真ん中に立ち、対戦相手のザクと見合っているユリィはそう怯えていた。しかし周りをギャラリーに囲まれてしまっては逃げようがない。
ユリィは、ザクが意外にも細身で、すらっとしたイケメンだった事に驚いていた。もっとゴツゴツとした体のゴリラを想像していたのだが。
「それでは!転生者ユリィと戦士ザクの対戦を執り行う。両者見合ってぇー、よーいはじめっ!」
レヒラーの大声が闘技場に響き渡った途端、ザクは物凄いスピードで近づいてくる。
ーーこ、こんな可愛い女の子に剣を振るうっていうの!?
ユリィがどうすればいいか分からずアタフタしているうちに、ザクは剣を振り上げながら飛んで、ユリィの真上をとっていた。
ブオン!
ザクの剣は空を切った。ユリィがギリギリで避けたのだ。
ユリィは何が何だか分からなかったが、このままでは怪我をするだけで終わる。なんとかせねばという焦りがユリィの手に、木刀を振らせていた。体育の授業でやったソフトボールの要領で…
ドゴォォン
凄まじい音が鳴り、ユリィは無意識に閉じていた目を開けた。目の前の光景では、白目を向いたザクがギャラリー上の壁に埋まっていた。
「ホ、ホームラ〜〜ン………え?」
……。
「うおおおおおおおお!」
一拍遅れてギャラリーが歓声を上げた。
「すげぇぇ!」
「なんだ今の!?」
「全く見えなかったぞ!?」
ギャラリー達の興奮する声で、ユリィはやっと自分が勝ったのだと自覚し、安心したのかその場にへたり込んでしまった。
その後はユリィにとってとても気持ち良く、久しぶりに満たされるひとときだった。あらゆる人から「すごい」「さすが」と声をかけられ、ヘルルクやレヒラーからも褒められた。
「強すぎます…。対戦ありがとうございました!またお手合わせ願います!」
ザクからもそう言われ、ユリィは笑みが溢れ出ていた。
「圧倒的な実力を示したようではないか。すばらしい。お主には多少の稽古の後、すぐに魔族との戦いに参加してもらおう。」
王からそう褒められた時、自分は本当に強いんだ。と、改めて自覚した。
ユリィはどんどんと自信を取り戻していった。無理もない。稽古場にはユリィに敵う者は存在せず、毎日褒めちぎられるのだ。
ドォーーン
「私には敬語を使いなさい!私の圧倒的強さにひれ伏せ!」
転生してから5日ほど経ち、稽古で倒した戦士達が100名を超えた時、ユリィはそう高々に叫んだ。