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2話 私が戦う!?

 扉の中は怖いほどに静かだった。コツコツと百合の歩く音だけが部屋の中に響いた。

 両脇には兵士であろう男達が百合を睨むように並んでいた。


ーー気味が悪いわね…


 奥には、両隣にいかにも屈強そうな兵士を置いた、髭を生やした男が装飾の施された椅子に座っている。おそらくあれが王なのだろう。


「女ではないか」


 百合のことをジロジロ見た後、王は手前にいたローブの男に言った。


「え、ええ。ですが迷い魂の中で一番素質があったのは彼女で…。」


 そう言う声は微かに震えていた。


「ほう。お主、名前はなんと言う。」


 王は見定めるように百合を見る。バカにするような、試すような視線が百合は気に入らなかった。


「あ、あなた何様のつもり!?この国の王だかなんだか知らないけど、私は貴方の部下でも、この国の国民でもないの。従う義理はないわ。

 今私は急に気付いたらこの城にいて、何が何だか分からないの。今、どういう状況か説明して…」


「待て」


 百合の言葉は、王の声によって遮られた。その時初めて、周りにいた兵士たちが今にも襲ってきそうな顔をしていることに気付いた。


「ヘルルク。世話役はお主だったな。」


 王は冷静な声で、ヘルルクを責めた。


「も、申し訳ありません。彼女はこの世界に来たまもなくで、右も左も分からないのです」


 王は再び百合の方を向き、言った。


「分をわきまえよ小娘。わしの命令一つでお主の首は飛ぶ。」


 その瞬間、百合の体はその圧によって固まった。言葉に恐怖したのではない。王の醸し出す雰囲気に圧倒されたのだ。身体中から冷や汗が流れ出し、手が小さく震えた。

 その感覚は、甘やかされながら育った百合には味わった事のないものだった。


「お主の名前は?」


「堀田百合です…。」


 王がニヤリと笑う。これも癪だが、百合にはもう反抗する気力は残っていなかった。


「ふむ…それならお主はこれからユリィと名乗るのだ」


ーーえ?


「ああ、そうだったな。このような状況になっている経緯を知りたいのだったな。いいだろう。」


 怪訝な顔をしていた百合を見て、王が話し始めた。


「まず前世、どんな所で生きていたかは知らぬが、そこでお主は一度死んでいるのだ。」


「し、死んだ…?」


「うむ。そして、死んだお主の魂は、迷い魂となって世界と、世界の狭間を彷徨っていた。

 我々は魔族との戦いを終わらせるために、戦う素質がある迷い魂をこの国に転生させたのだ。」


「……」


「理解出来ていない顔だな…。まあ良い、明日にはどんな力を持っているのか確かめる稽古を行う。それまでに気持ちを整理させよ。」


―――――――――――――――――――――


 百合は初めの部屋に戻ってきたいた。この部屋から出て30分も経っていないはずなのに、疲れがどっと溢れる。


ーー私、死んだの…?


 百合は動揺を抑えられなかった。ならばここは天国か何かなのか?だけど王から聞いた限り、そういう事ではなさそうだ。

 とにかく分からない事が多すぎる。明日の稽古とはなんだろう。そう悩む百合の気持ちを察したのか、ヘルルクが説明してくれた。


「これから魔族と戦っていく上で、どれほどの実力をもっているのか、どのタイプの技が使えるのかを確かめるのが、明日からの稽古です。」


「なるほど…」


ーーん?


「魔族と戦っていく上で?…私が戦う!?」


 









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