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王宮にて⑤ ~ミゲル視点Ⅰ~

ここからは殿下グループの話となります。

側近の一人ミゲル視点で話は進みます。

 「しかし、間違いである事に気付きました」

 

 謹慎して直ぐにその時はやってきた。場所は

 

 父上の進言もあり誇張なしの事実をありのままに淡々と陛下にご説明した。その際に殿下の顔を直視出来なかったが、口を開けて呆けて見つめていた。次第に顔が赤くなり睨んでくる様になった。横のナターシャ嬢も例外ではなく、さも涼し気に口は真一文字に固く結び視線は非難で固定されていた。更に真横のマイクは普段無口は分、怒りが余計に伝わってきた。

 まあ、それは納得できる。これまでは殿下の行動に関して忠告はしてこなかった。寧ろ効果的に振る舞う様に修正した程だ。それが裏切って梯子を外されたわけだからな。

 

 「以上が事実でございます」

 

 「ふむ。概ね相違ないな」

 

 陛下のお言葉と同時に王妃陛下も小さく頷いた。殿下の説明の際はどこか無表情の様な悲しそうにしていらしたのに、私の時は無表情でありつつも意思が強い表情をされていた。マルグリット嬢達が先に招集される事は父上から聞かされていた。それが影響しているのだろう。

 

 「他に追加や訂正がある者は名乗りなさい」

 

 そこからは加害者側の一人として見ても酷い有様だった。言葉遣いは流石に乱れはしなかったが、事実の否定、修正、改変しまいにはなかった事にしだした。発言した私やマルグリット嬢達が虚偽の説明をしたと自分達には否がないと言い張りだした。その都度、陛下が少し追及するとしどろもどろになり、支離滅裂になって更に窮地に陥る。これの繰り返しだった。余りに必死になりすぎて両陛下の表情が消えていく事に気付いていない。辛いというか醜いというか哀れになってきた。事実を事実として認められないなんてな。そんな私もつい先日まであっち側だったなんて、ゾッとする。

 

 

 「もう納得した様だな。では出揃ったと判断する。その他の者の意見はどうだ?」

 

 殿下達の見苦しい意見陳述も終わり、陛下は私たちの後ろに座っている親たちに視線を向けた。ここには加害グループしか呼ばれていないので、親も四組しかいない。

 

 「では私めから。独自に調べた結果と相違ないと判断致します。従って事実を事実として捉えてこれからを議論するのが建設的かと愚考致します」

 

 最初に声を挙げたのはやはりというか最も高位の侯爵家当主である父上だ。謹慎している間、父上とは極力関わらない様にしてきた。その際に加害者側の認識だけでは片手落ちだから独自に調べていた。その結果、信じるにたる事実だったんだろう。原因究明は重要だが、対応を優先とした。

 

 「ブンターベール卿の言い分は理解する。だが、他の皆はどうだ?」

 

 「異論ございません」

 

 ドノバン近衛団長が代表して返答すると全員が頷く。とは言っても残りはバウマン男爵しかいないが。母親達は出席しているが発言は控えている。ドノバン近衛団長はマイクのお父上で伯爵家当主でもある。体躯は鍛えられていて筋骨隆々で鈍重ではなく、しなやかに動ける軍人の印象だ。団長だから個人の武勇より指揮に重きを置いているようだ。バウマン男爵は当事者のナターシャ嬢のお父上だ。こちらは内務閥に属する領主貴族のお一人で教育に力を入れていると有名だった。社交界では美男美女も相まって名を馳せ、令嬢たちは賢妻として引く手あまただった様だ。

 

 「では、これからについて何か案があるのか?」

 

 「まず学園内の事ではありますが、婚約破棄は成立したものとして進めます。その上で第一王子殿下の王位継承権の剥奪及び第二王子殿下の継承順位の繰り上げです」

 

 ばんっ!!

 

 「宰相! 貴様は何を言っているのは分かっているのか!? 王位は第一王子が継ぐと王国法で決められているだろうが!!」

 

 一旦、冷静になったと思ったら父上の進言で一瞬で頭にキテしまった様だ。テーブルを強打し椅子を倒す勢いで立ち上がると父上を指差すと糾弾した。あっち側だったら同じ気持ちになっただろうが、今は自分でも驚く程に冷静だ。

 

 「理解しております。ただ、ご自分の決断に責任が伴うのもご理解されているかと思いますが」

 

 「そ、それは先ほど説明した通りだ。次期国王になる者として王妃は自分で決めると」

 

 「それは説明になっておりません。そもそも王妃候補の選定には国が関わっていますし、その決定は王家と侯爵家の合意です。そして決定権者は当主で、その当主を無視して破棄は出来ません」

 

 「だ、だから言っているだろうが。王妃は自分で決めると」

 

 「殿下は当事者ではありますが、決定権者ではありません。そして王位は男子の長子優先とあります」

 

 「そ、そうであろう。法に則れば次期王は私で決まりではないか。それが何故剥奪となるのだ!」

 

 最初はそう思っていたからこそ破棄に賛成した一面もある。基本的に家督は男子の長子相続が望ましいと。だが、これは絶対ではない。病や怪我で相応しくないと判断されれば順位は入れ替わるしそれ以外の理由でも変わる場合もある。相続順位はあくまでも御家の相続問題をややこしくしない為の法だ。

 

 「先ほどの話に戻ります。このままでは内乱に突入します。その回避の為です」


お読み頂きまして誠にありがとうございます。

『面白い』『つまらない』など評価を是非宜しくお願い致します。


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