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ミゲルの場合②

ミゲル視点パート②です。

 「ばっかもん!!!」

 

 「ぐっ」

 

 卒業パーティが終わって王都屋敷に帰ってくるなり挨拶もなしに殴られた。

 

 「ぺっ。いきなり殴るとはどういう事ですか、父上」

 

 殴られたのは10年以上前か。その時でさえ剣術稽古での出来事だ。久しぶりに感じた血の味が不快で絨毯の上だろうが構う事ない。折角の良い気分が台無しだ。今日は当主交代も視野にいれての第一歩だというのに、なんて落差のある日だ。

 

 「どういう事だと!? あれほど距離を取れと言っただろうが。しかも最後に婚約破棄を宣告しただと。何を考えている!?」

 

 「それが最善だと思ったから賛同したんですよ。殿下が即位なされた暁にはどうせナターシャ嬢を迎え入れる予定なんです。それが早まっただけですよ」

 

 「……呆れて何も言えない。今日は祝いの日だと思ったのに、最悪の日になってしまった。まさかここまでする馬鹿だとは」

 

 「殿下のなさる事が馬鹿な事ですか!? その発言は不敬罪ですよ。父上ならご承知のはずですが」

 

 「はあ。詳しくは執務室で聞く事にする」

 

 父をはじめ家族と執事が勢揃いだ。嫁いだ姉上たちはいないが、弟妹がいる。殴られたのを見られて気まずい。とても歓迎ではない雰囲気だ。視線が痛い。まあ、私は立っているから余計にそう思ってしまう。

 

 

 「殿下と距離をとる様にと言ったはずだが、どうしてだ?」

 

 「それが最善だと確信した為に距離は取りませんでした。敢えて近くにいる事でより侯爵家に良い影響が出ると判断しました」

 

 「それが如何に危険かも説明したはずだが」

 

 「確かに危険だと思いました。しかし危険だと説明頂きましたので、その危険を回避する様に行動すれば利益に繋がると思いました」

 

 「危険だと分かってて敢えての行動か。なるほど。それでこの後はどうするつもりだ?」

 

 「いつも通りです。休みが明けたらに王宮に出仕するだけです」

 

 「それ以外はどうするつもりだ?」

 

 「それ以外ですか? 何かする必要がありましたか? 準備は万全ですが」

 

 「その程度の認識か。ストラーデ、懸念事項はあるか?」

 

 「は。まずは王家及びレヴィーノ侯爵家への対応です」

 

 対応? 何に対してのだ。分からない。

 

 「その顔は本当に何も分かっていない様だな。つまりだな……」

 

 そこからは如何に婚約破棄が危険かを滔々と説明された。最初は分からないかった。いや、分かろうとしなかった。それは仕方のない事だろ? 殿下はいずれ即位される。その決定は即位後の事を見据えて先手を打ったと見る事ができる。侯爵家とは一時関係は崩れるだろうが、政策が正しいと気付けば修復を申し出てくるはずだ。そう思っての行動だったはずだ。

 

 「では、父上はこれからどうなると?」

 

 「陛下の耳にも入っているから近い内に招集があるだろ。幾ら学園の中の事とは言え、厳しい沙汰がある事は覚悟しろ。それは我が侯爵家もだ」

 

 「で、ですが、父上の反対を押し切って行動に移したのです。侯爵家にまでは及ばないと思いますが」

 

 「そんな甘い考えだから今回の事を引き起こしたんだろうな。いいか、貴族は自分が危機的状況にでもない限りは蹴落とすのに必死になるものだ。今回の事で言えば、直接関係していない貴族も対象になるだろう。我が家に関しては直接関係している。攻撃がない若しくは易しいなんて夢だな」

 

 「父上、侵攻はないと思いますが領の防備を固めますか?」

 

 「いや、不要だ。それは国軍が介入する切っ掛けになってしまう。だが領境で演習はするかもしれんから、注意に留めろ。後は関税引上げ、取引量減少、商人の出入りを制限だろうな。多少は飲んでも構わんが、タダではやらせるな」

 

 「分かりました」

 

 「父上、私はどうすれば?」

 

 「……そうだな。招集の際に説明を求められるだろうから、事実確認をしておけ。説明は正確にだ。説明を求めるのは合っているかの確認だけだ。心象を良くしようとして嘘偽りを述べるな。益々立場が悪くなる」

 

 「分かりました、自室にて謹慎しています」

 

 それからは家族はもちろん執事にも目を合わせる事なく自室に戻る。あれ程危険だと説明されたのに一考もしなかった。あの時は反発心と功名心で父上たちが煩わしかった。私の将来の嫉妬しての事だと思っていた。あの時の事が嘘の様に今日の説明がすんなりと入って納得した。納得してしまった。なんて愚かな事に加担してしまったのか。婚約者からも忠告を受けていたのに無視してしまった。

 

 

 

 「あなた、あの子はどうするおつもりですか?」

 

 「王家の対応次第になるが、侯爵家からの追放は決定だな」

 

 「学園内の事ですから厳しすぎるのではありませんか? 学生の事だからと説得はできませんの?」

 

 「無理だろうな。学生の身であっても陛下の決断を蔑ろにしたんだ。当事者であろうと手順を踏まなければ処分は必要だ。それが殿下なら尚更だ。王家にも問題があるから国としては処分できない。だから、各家で処分を考えろとなるだろう」

 

 「兄上は帰ってこないのですか? せっかく学園でのお話を聞こうと思ったのに」

 

 まだ小さい子には理解は出来ないだろう。久しぶりに会った兄が殴られたのを見て非難の目を向けていたが、次第に和らいでいった。だが、それでも兄との時間を奪う父の事は許せないのだろ。悲しいものだ。

 

 「ミゲルはしばらく自室でお勉強をしますから、邪魔はしてはいけませんよ」

 

 「「はーい」」

 

 口を尖らせて不承不承といった感じだ。まだ小さいからじっくりと教育していかんとな。

 

 「だが実際問題、追放とすると影響が大きすぎる。いっそなかった事にしてしまいたい位だ」

 

 「さっきはああ言いましたけど、サーマリー家とは婚約破棄するしかないでしょうし。この二人の婚約先も見つけるのに難航するでしょうね」

 

 「それは覚悟の上だな。全く頭の痛い事だ」

 

 ミゲルを監督出来ていなかったと言われれば反論は出来る。出来るが納得はしないだろ。逃げの反論だとな。ま、ワシでもそうする。

はあ、当事者だから進言は控えるとして陛下の決定待ちだな。


ストックがここまでなので、急いで書きあげます。


お読み頂きまして誠にありがとうございます。

『面白い』『つまらない』など評価を是非宜しくお願い致します。


誤字、脱字などの報告や感想もお待ちしております。

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