表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/29

親は強敵だ

 「馬鹿も休み休みにしろ」

 

 そんな呆れと出ていけのジェスチャーで上官への説得は諦めて撤退した。

 

 「二人ならって淡い希望が掠りもしないで無残に散ったな」

 

 あの日から直ぐに上官へ報告に行く事にした。二人ならって物量で押そうと思ったが、鼻で笑われた。それどころか憐憫の視線も合わさってしまった。説得は不可能だと感じていたし対応についても納得だ。未来についてと言われたところで誰が信じるんだ。ましてや軍隊が信じる訳がない。不確定の事を信じて行動するなんて集団自殺だ。

 

 「分かってた事だろう。だが報告は一応した。これで未報告については問われないだろ。安心だな」

 

 「その安心と引き換えに俺たちの評価は頭が逝かれたヤツって事になるがな」

 

 「あの未来が起これば評価は変わるだろ」

 

 「起こって欲しいような起こって欲しくないような気分だな」

 

 「……だな」

 

 講義の合間を縫って報告したけど徒労に終わった。評価が覆るには予知夢通りに戦争突入だし何も起こらなければ狂人指定のまま。個人の為には戦争不可避だが国の為には起こらないにこした事はない。軍人だがまだ国への忠誠が薄いから出来れば戦争になり最小限の被害で終わらせるのが最善だな。そんな旨い事いく訳ないだろうけど願わずにはいられないな。

 

 

 

 「……すまんが、もう一度説明してくれ」

 

 父が頭を抱えてしまった。そりゃそうだ。大事な話があるからと王都へ呼び、且つミューゼの父親まで同席していて予知夢の話だ。頭を抱えたくなる気持ちも痛いほどに分かる。大事な話が夢の内容だ。軍隊の訓練が厳しくておかしくなったと思うのは当然だ。しかも俺が変人だとヴァロワ家当主に喧伝している様なものだ。

 

 「いづれ戦争が起きて国家滅亡になるって言ってるんだ」

 

 「そのいづれとはいつだ?」

 

 「近い未来?」

 

 「どうして疑問形なんだ。そこが重要だろ」

 

 「詳しい日程が分かれば苦労はしない。だが、数年だと言っていた」

 

 「……仮に、仮にだ。起こる前提で考えても何もする事がないぞ」

 

 「それは分かってる。だけどいつ出陣となっても良い様に訓練は怠らずに」

 

 「……うむ」

 

 それきり顎に手をやりじっと俺を見つめて考えに沈んでいった。こうなると暫くは復帰しない。

 

 「ヴァロワ卿はどうでしょうか?」

 

 「偵察くらいはやっても良いんじゃないか?」

 

 「何を言ってる。王家が既にやっているに決まっているではないか」

 

 ……復帰した。

 

 「それでもだ。王家がやっているからといって、やってはいけない理由にはならないだろう。それにどこよりも早く兆候に気付けるだろう」

 

 「それは……そうだが。第三王子は現在留学中だぞ。帰国は例年通りだと今年のはずだが、演習に参加はないはずだぞ」

 

 「そうなんだが、それは表に出てる情報だろ。軍との繋がりは不明だし為人ひととなりが全く見えてこない。継承順位が低いからって理由もあるだろうがな。だが王家や外務閥、軍情報部は裏の情報を持っているだろ。それを探るだけでも有益だろ」

 

 「……うむ」

 

 ヴァロワ家当主とは挨拶程度の親交しかないが、父上は違う。子爵家同士で年齢も近く上下の関係ではないが同じ軍閥だ。俺とミューゼの関係と同じ様に気安い。

 

 「それに開戦となっても諸侯への動員は最初ではない」

 

 「……そうだな。時間的にもまだ余裕はあるという事か。分かった、情報くらいは探らせるか。お前んとこと協同で良いよな」

 

 「それで構わん。俺んとこだけだと人手が足りないからな」

 

 ヴァロワ家当主の助け舟で何とか前向きにいくようだ。積極的協力ではなく、予知夢が嘘である事を証明する為の消極的協力だな。

 

 「前向きに検討って事で良いんですよね?」

 

 「……うむ。戦争が起きる前提ではなく念の為、一応、安心の為にだ」

 

 腕組みをして背にもたれ掛かり見上げている。不承不承という事が態度にありありと出てしまって笑ってしまうがありがたい。こんな根拠もない事を前提として行動してくれるなんて。

 

 「では、情報収集についてはこれから詰めるとして他に何かあるか?」

 

 他に何かあるか。あるに決まっている。寧ろこれからの事を考えると胃が痛い。思わずミューゼと顔を見合わせてどっちが言うか無言の擦り付けをした結果、俺になった。

 

 「……実は、レヴィーノ侯……」

 

 「「無理だ、お前たちが適任だ」」

 

 揃っちゃったよ。言い切る前にインターセプトされてしまった。父上だけかと思ったらヴァロワ家当主もだった。こんなに気安い関係なのは性格が似た者同士だった事が大きいのかもな。

 

 「どうしてもですか? 当主からの方が説得力はあると思いますが」

 

 「いや、侯爵を説得とか無理、無茶、不可能だから。一応情報収集はするから説得はお前ら二人だ、これは当主命令だ」

 

 「ぐっ。……分かりました」

 

 普段しないのにこんな時に当主命令とは。権力や権威にとことん関わりたくないんだなと改めて痛感する一幕だ。

ちょっと目を離したら二か月経ってました。。。


お読み頂きまして誠にありがとうございます。

『面白い』『つまらない』など評価を是非宜しくお願い致します。


誤字、脱字などの報告や感想もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ