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聞かなかった事に

明けましておめでとうございます。

新年初投稿です。

少し事態が動きます。

 「足がもつれてるぞ!! 何時如何なる時でも足と頭を動かせ!」

 

 「「はい!」」

 

 辛い。

 

 キツイ。

 

 学園での実習が楽園かと思う程だ。全身鎧を着込んでの走り込みや組手、分隊から旅団規模の演習など様々だ。しかも今回の演習には座学はないから休まる時が一時いっときもない。熟睡なんてもっての外だ。起床喇叭らっぱが轟けば夜半だろうが演習開始で、そのまま翌日まで続ける事なんてザラだった。肉体はもちろん精神もすり減り早く楽になりたいと願ってしまう。楽になりたい、だが「死」だ。

 

 

 「以上で演習を終了する! 解散!」

 

 「「はっ!」」

 

 ようやくだ。一か月にも及ぶ郊外大演習が終わった。入隊して節目の半年記念? で毎回実施する訓練だ。毎回趣向は変わり、今回は障害物のないだだっ広い平野だった。主な目的は大規模戦闘における軍隊運用で、新米は漏れなく最前線の突撃兵だ。そこに貴賤はない。この後は小休止後に昼食だ。その後に撤収作業をし王都に帰還後にそのまま二週間の休暇に入る。

 

 「ロレンス、領地に帰る予定はあるのか?」

 

 疲労困憊で地べたに寝転がっていると声が降ってきて横に座ってきた。

 

 「んー、帰りたくないが帰る。お前は?」

 

 「俺は帰りたいから帰る」

 

 「どうしてだ?」

 

 「兵舎の飯がマズいからだ」

 

 「あー、納得だ」

 

 軍隊では優美で豪華な食事とは無縁だ。寧ろ粗食で生活できる様に調整される。だが、体を動かす仕事故に量はある、無駄にある。ありすぎる。加えて兎に角、薄味だ。健康に良さそうと思うかもしれないが、申し訳程度の塩しか入ってない。一般的な調味料は「さしす」だけで、もちろん? 「せそ」はない。

過酷な訓練の中での楽しみは食事なのに、意欲も活力も湧かない。食糧事情は領軍の方が断然良い。国軍は倹約で粗食になっているのではなく、味は二の次で量を優先しているだけだ。だから、休暇の際は領地に帰るのが一般的だ。

 

 

 「そうか、往復で一週間だったな。帰りたくないか」

 

 「休暇の半分を移動に費やすんだぞ。帰りたくないだろ。ま、それでも帰らないとな。婚約者に会う予定もあるしな」

 

 「俺も一緒だ。王都の情勢とか流行とか報告もあるしな。そういえば結婚はいつするんだ?」

 

 「予定では三年後だな」

 

 「似た様なもんだな」

 

 こいつは子爵家三男のミューゼ。境遇が似ている事から仲は良好だ。端正な顔立ちでやや細身である。個人武術では見劣りするが視野が広く目端が利く為に参謀や後方支援タイプだ。学園では大層モテていた。所謂、敵ってヤツだ。

 

 「いつ近衛に行くんだ?」

 

 「……」

 

 「あれ以来・・・・みんな噂してるぞ。近衛に内定しているって。しかもレヴィーノ侯爵が後見しているって」

 

 その噂は耳にしている。眉唾物から正確な物まで結構な数が出回っているし、何度も聞かれた事でもある。しかも同期だけではなく上官まで質問してきたりした。結果、妬み嫉みが酷い。訓練教官からは執拗に扱かれ居残りは当然で、雑用も当番制なのに回数が多いとかだ。

 

 「……行かない」

 

 こんな状況で行ける訳がない。今、行ったらやっぱりかと認める様なもので、国軍は腰掛だったのかと軽視していると見られるだろう。そうなると実家にも影響する事だろう。それは避けねばならない。

 

 「……そうだな」

 

 答えたくないと背を向けるとこれ以上は追及してこなかった。あれこれ聞きたいだろうが敢えてしてこなかった。上官たちから命令されているのは知っていたけど、これまで聞いてこなかった。休暇前だから聞いて来たのだろう。何とも得難い関係だ。

 

 

 

 「やっと懐かしい兵舎に帰ってきたな。で、いつ帰るんだ?」

 

 「移動を考えると直ぐにでもと思うが、明日朝一で出発する予定だ。そっちは?」

 

 「俺もだよ。王都から近いとは言え、のんびりとしていられないのさ。近い分、社交会が盛り沢山だよ」

 

 「どっちもどっちだな」

 

 撤収作業を終え兵舎に戻ると女性が一人で佇んでいた。兵舎は王都の東西南北の各城門付近に建てられていて、繁華街ではないので人の往来は少ない。まして人が訪ねてくる事は稀なので注目の的だ。遠巻きに見てるだけで誰も声を掛けたりしてない様だ。貴族令嬢ならば付近に従者がいるし、本人が一人で立っている事はしない。だが、装いや立ち姿が庶民とは違い品があり近寄れないでいるみたいだ。

 

 「誰目当てだろうな」

 

 「誰でも良いけど、厄介事の臭いしかしないな」

 

 「だな。それよりも帰る前に呑もうぜ」

 

 絡まれる前に早く呑みに繰り出すのが吉だろう。先輩へ口利きとか頼まれると面倒に巻き込まれて一日が潰れる未来が容易に想像できる。

 

 女性の横を通り抜けようとしたら案の・・・声が掛かってしまった。もしかしたら、やっぱりかと思いがよぎったのがいけなかったのだろうか。

 

 「ロレンス様、少々お時間宜しいでしょうか」

 

 この半年間、話題にもならなかったのに一瞬であの時に引き戻されてしまう。拒絶の態度をしたからもう接触はないと踏んでいたのに。やはり、最後の呟きに関係しているのだろうか。

 

 「断罪回避も必須イベント」

 

 「も」って何だよ、イベントって何だよ。これがずっと頭から離れなかった。

今年の目標は完結です!!!


お読み頂きまして誠にありがとうございます。

『面白い』『つまらない』など評価を是非宜しくお願い致します。


誤字、脱字などの報告や感想もお待ちしております。

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