無関係とはいくわけにもいかず
断罪パート②です。
陛下の発表は淡々と続いた。内容としては王位継承権の剥奪とそれに伴い王族籍からも除籍となり身分としては貴族ではなく平民になるというものだ。何不自由ない優雅な王族から平民への格下げは生活が一変しすぎて、いっそ幽閉の方がましなんではと思ってしまいそうだ。ただ、この処置は即日ではなく再教育の後に有効となる旨も併せて説明された。
「継承権剥奪は即日だが、王族籍除籍は再教育後とする。その理由としては、この様な愚行をする者を何も処置せずに市井に放逐はできん。それでは学園や王家の存在意義がなくなってしまう。再教育の期間は最低一年間で対象はここにいる四人全員だ」
全員。
これは妥当ではないかな。殿下だけの暴走とは言えないからな。一言も発しなかったマイクやナターシャ嬢も考えが同じだからこそ何も言わずにいたのだろうから。まあ、マイクに関しては元々寡黙ではあるが。周りの反応を見るに驚きはなさそうだ、二人は何か反論したいが陛下の説明を遮るのは余りにも不敬と考えて黙っている様だ。ミゲルは結果が分かっていたみたいに微動だにせずに俯いて静かにしている。殿下は言わずもがなだな。
陛下が他の三人の処遇についてと前置きすると男女六人が両陛下の後ろに静かに並んだ。何を隠そう当事者の両親だ。今回は運悪く正妻の子供なので、並んだのは最小限で済んだみたいだ。だからこそ影響は大きいだろう。
「他の三人についても貴族籍剥奪は決定済だ」
「そ、そんな!? お、お父様!!」
それまでは一言も発する事なく殿下に寄り添っていたナターシャ嬢もこれには黙っている事が出来なかった様で、抗議の声を挙げた。ただ、陛下に対してではない処が一応は弁えているという事だろうか。
「尚、除籍時期は各当主に一任するものである」
ナターシャ嬢の抗議はないものとして淡々と続けられる。後ろに控えている六人も微動だにせずにいる。除籍なんて重い罰を陛下の独断と思い付きで決定するわけがない。事前に協議はもちろんしているはずだ。即時や殿下と同じ時期にしないのは、各貴族家に一定の配慮をした形になるのだろう。
とは言いつつも時期は揃えるんだろうなと。早くても遅くても何かと言われるだろうからな。王家としては除籍のタイミングを各貴族に任せる事で、各貴族家としてはタイミングを王家に合わせる事でお互いに益のある事なのだろう。
結果として四人共に貴族籍剥奪となる訳だが、殿下の処分を発表された後だから他三人の事は若干驚きが少なかった様に感じる。いや、殿下の処分である程度は察したとも言えるが。
「これはまた随分と思い切った処分をするもんだな。君もそうは思わないか?」
来た。
近くに来ている事は分かっていたけど敢えて無視をした。限りなく可能性は低いけど、ただ単に場所を移動しただけと。ま、それはあえなく撃沈した訳で今の状況に至る。渋くて低い声を聞き間違える筈はない。
「は。ご無沙汰しております。レヴィーノ侯爵閣下」
「はは。そんなに畏まる必要はない。今日は祝いの席で君は未だ学生の身分だ」
「しょ、分かりました」
「うむ。それで君はどう思うかね」
振り返ると侯爵家族がいた。夫人は別のテーブルで談笑しているかと思ったが、このタイミングで合流したみたいだ。侯爵は外務閥とは思えない程の偉丈夫で相変わらず威圧感が凄い。対して夫人は社交界の華と言われる程に美しく華奢だ。性格は控えめだとの噂だ。そしてマルグリット嬢だ。国の重鎮家族に囲まれるなんて何て局面だよ。援軍は見込めないだろうし。
「ある程度は予想の範疇でしたが、もう少し軽いと思っておりました」
「ほう。どうしてそう思ったんだね」
「最大の理由は学生であるという事です。そして卒業パーティーでの限られた人数への宣誓です。噂としては出回るでしょうが酒宴の出来事として処理する事も出来たかと思います」
「ふむ」
どうしてか品定めされている様で落ち着かない。さっきまでの果実水が干乾びて喉がヒリついてくる。今回の件で目立ったとは言え悪目立ちではない筈だ。
「では、どうしてだろうか」
数瞬黙考したかと思えば再度の質問だ。品定めというよりは味方に引き込めるかどうかの選定中って事だろうか。どちらにしても品定めには変わらないか。
「単純に侯爵家と男爵家を比べてどちらに益があるかは一目瞭然です。それを覆せる程に男爵家が優れているとなれば、陛下のお耳に入らない訳がございません。学生に責任はないとは仰いますが判断力に疑義が生じたからだと愚考致します」
現時点で殿下は王族だから不敬な発言だよな。判断力に疑義が生じるってアウト以外何物でもないだろう。でもこの場は卒業パーティーだ、ギリギリ許せる範疇だろう。……大丈夫だよな。
「……発言の意味は分かっているだろうな」
「……はい」
より一層強くなる目力。心臓が悪い人ならイチコロだ。身長的に見下ろされるからより強く感じるのだろう。
どれだけ視線を交えていただろうか。体感的には永遠にも感じられたが実際は十秒程だろうか。瞬きをそろそろといった時に声が掛かった。
「あなた、そろそろ私たちに挨拶をさせて下さい」
助かったと一瞬思ったが、気温が下がったと錯覚してしまう声だった。性格は控えめで温厚だとの噂だが、アテにはならないと実感した。
「う、うむ」
大きな体の侯爵が今や小さく見えてしまう程だ。声音と表情が醸し出す雰囲気が余りにも違いすぎる事に侯爵家の力関係が垣間見えた瞬間だった。温厚な人ほど怒らせては手が付けられなくなると再認識した。
前回の投稿から約2か月。
書こう書こうと思いつつも今までの習慣で読専に再ジョブチェンジしちゃってました。
気になるのを見つけると読み耽ってしまい最後まで読もうとしちゃうんです。
これではダメだと奮い立ち何とか1話。
継続は力なり。
頑張るぞ、おー!
お読み頂きまして誠にありがとうございます。
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