断罪は始まるが序章も序章
いよいよ断罪スタートです。
ここに来るまでに長かったですが、ようやくです。
ちゃんと断罪できるのか自分自身に不安が残りますが、最後まで走りきりたいと思います。
「跪く事はない。立って聞いていなさい」
そう静かに言い聞かせる様に優しい声音で四人に告げると殿下以外に目を向けられた。一瞬ドキッとしたが、呼ばれたのはもちろん当事者の四人だ。俺はあの日だけの当事者で、婚約に関しては部外者だからだ。
「第一王子であるフェルナンドから侯爵家令嬢であるマルグリット嬢との婚約を破棄し男爵家令嬢であるナターシャ嬢と改めて婚約すると宣言されたとの聞いたと思う」
後ろ姿しか見えないが、これから厳しい罰が待っていると確信しているのか殿下は挙動不審だ。周りは何かあると確信していたから騒ぐ事はないが静かにざわついている。
ここまで場を整えたが、どこか有耶無耶になってしまうだろうと思っている自分がいる。理由としては学生であり第一王子である事と且つ実行には移されていないからだ。何かしらの罰はあっても、対外的な意味合いが大きく内容は軽いのではと思い始めていた。
「第一王子の宣言だとしても内容が内容だけに軽々に追認はできない。だから、この数日間皆に骨を折ってもらい詳細を問い質してきた。その事にまずは感謝を」
そう言い終わると両陛下が揃って頭を下げられた。会釈程度であるが公の場で臣下にとる態度では決してないので学生だけでなく、親世代も一様に驚愕している。軟弱の印象が付き内政も外交も今後は何かと難しくなるだろう。日本人的には悪い事をしたら謝罪するのは当たり前だが、身分制度がはっきりとしている世界ではあり得ない。それを差し引いても頭を下げるという選択をしたのだ。学生のした事とはいえ、陛下は重く受け止めている様だ。時間にして三秒程だが体感的には永遠にも感じられた。それほどの出来事だ。
「まず婚約については正式に破棄とする事を発表する」
ここでまたしても騒めきが起こる。ついさっきは追認はできないと発言されたからだ。これには朝令暮改も真っ青だ。俯いていた殿下も顔を上げて横のマイクをどついている。静かにする様にと陛下が右手を挙げる。
「破棄は決定だ。それに伴い第一王子であるフェルナンドの王位継承権を剥奪とする」
剥奪。
この一言が発せられた瞬間、これまで以上の騒めきが起こった。有耶無耶になるのではとの予想が覆された。周りを見ると落ち着いているのは親世代の中でも宰相やレヴィーノ侯爵くらいだ。剥奪となると第二王子が次代の王の最有力となる。今後どの様に対応していけば良いか絶賛思案中の事だろう。だが、それよりも気にしなければいけない事がある。
「へ、父上! 剥奪とはどういう事ですか! 私は第一王子であり正当な王位継承者です! それを剥奪とは国を民をどうお考えなのですか!」
怯え、喜色、憤怒。この数分間だけで感情がジェットコースター状態だ。耳に入った言葉が理解の範疇を超えたのか、声を荒げて強く抗議している。その行動に一定の理解をしている自分がいる。王族に限らず貴族に生まれる事は勝ち組とされている。その中でも第一王子は最も至尊の座に近いのだ。抗議をする事が正常なのだ。だが、フェルナンド殿下の必死の訴えも陛下はどこ吹く風だ。
「それは説明済であるし且つ、この様な結果になる事は予想できた筈だ。何故、今更声を荒げるのだ」
陛下は怒るでもなく淡々と述べていらして、小さな子供に言い聞かせる様に説いている様に見える。
「説明はされたました。ですが、到底納得できるものではありません! 何より、エンリコは社交デビューもしておりません。その様な未熟な者に継承者は務まりません!」
「それも説明済だな。お前が納得するしないは関係ない。社交デビューしていようがお前の様に愚行をするのだからな」
「で、ですが! 継承者が一人では何かと不安ではありませんか! せめてエンリコが立派に継承者として成長するまでは継承者剥奪を延期しては如何ですか!?」
「……どの口が言っておる! その言葉は行動を起こす前に聞きたかったな」
それまで淡々と説明なされていたのに、余りにもな言い訳に我慢できなくなったのか声を荒げて強引に終わらせる。陛下が声を荒げる事なんて聞いた事はないし、常に微笑をもって接する事で有名だ。その印象とは正反対の事に驚き静まり返っている。それを聞いて殿下は崩れ落ちてしまった。ナターシャ嬢とマイクは殿下に寄り添い、ミゲルは一人立ち尽くしている。
それからは特に反論や異論もなく、陛下から事の経緯と結果の説明が改めてされた。陛下の大声もあって説明中は静かに聞き入っていた。説明を聞き、大部分は納得できてしまう内容だった。もちろん細かい部分で違う箇所はある。
その間、渦中の人であるマルグリット嬢に注がれる視線は異様だ。どう接すれば良いのか迷いや、正式に婚約破棄されたとして好奇など思惑が交錯している。ダンスの後に別れた為に一緒にいなかった事が幸いした形になった。当事者でもないのにこれ以上好奇の目に晒されるのは御免被りたいからな。
そう安堵していたのに、マルグリット嬢とレヴィーノ侯爵が近付いてくるのが見えてしまった。それを見て友人たちがそそくさと離れていき空白が出来上がってしまった。俺目掛けて来ている事は確実だから逃げる事も出来ずに待ってしまった。テーブルの一つに避難してきているのだと淡い期待を胸に。そんな事はないのに。父たちを見ると顔を逸らされてしまった。
はあ、面倒な事になりそうだ。
7月に入って暑い日が続きボーっとして創作意欲が失せてしまい遠のいてしまいましたが、
何とか書き上げましたので気長にお待ちください。
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