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ミゲルに助けはくる……のか

卒業パーティーやり直しパート3

ミゲル君サンドバック回2

 「そ、そんな事は決してない。両陛下もおられる場だからこそだ。その様な場での謝罪は貴族であれば、重く受け止めるだろう」

 

 まあ、分からなくもない。ないが、マルグリット嬢は攻勢を緩めるつもりはないだろうな。考え抜いた謝罪ではなく、深く考えずに咄嗟にした行いだろう。説明に粗が目立つ。

 

 「先ほども言いましたが、ここに殿下及び王家がいない謝罪に意味はありません。それに衆目の中ですが場を整えていないので非公式扱いになるでしょうね。もしかして、この場は形だけで後で殿下及び両陛下も併せての謝罪の場を整えているのでしょうか」

 

 「そ、そんな重大事私だけで調整できるはずがないだろう。分かっていて聞くとは悪趣味だな」

 

 精一杯の反攻として悪趣味と言ったのだろうが、悪手の一手だな。全面的に被害者であるマルグリット嬢を責めてどうするんだ。ほら、さっきまでは面白がっていたのに今は能面だよ。謝罪に来たから心境の変化があったのかと好意的に捉えたんだけど違ったか。

 

 「そう。貴方は何も分かっていないのね。いえ、分かろうともしないのね」

 

 「私の何が理解不足だと言うんだ」

 

 「説明してあげても良いのだけれどもそれは私の役目ではありませんわね」

 

 そう言うと視線を横にいる俺に向けてきた。ここで俺に振るのか。ギョッとして思わず見返してしまった。自分で言ったのだから俺にさせるなよ。第一俺は説明する役目なんて負ってないぞ。これはあれか? 同格の異性からよりは格下の同性から説明させる方が尊厳を傷つけないとかかな。今更だからその理由はないな。単純に面倒に感じたからかな。派閥が同じではないし、これ以上は当事者になるのは避けるべきか。それに……。

 

 「幾つか理由は思い付きますが、マルグリット様が直接ご指摘された方が宜しいかと思います」

 

 反論されるとは思ってもみなかったのか暫く見つめ合ってしまった。婚約者でもないのに見つめ合うなんて、ミゲルがいるから良い様なものを。そういえば前世の日本でもいたな、指摘はするけど説明は子分にやらせる人。上手く説明できないから、かえって相手を怒らせるからって理由で自分ではしない人。それで説明すると「そこまでは言ってない」と梯子を外して敵意が向いてくることが。

 

 「……そうですわね。謝罪とはどれだけ相手の事を慮る事ができるかで決まりますわ。今回の謝罪はミゲル様の自分本位のみで、私や侯爵家の事を何一つ考えておりません」

 

 「先ほども言ったが謝罪は早い方が良いと判断した為だ。その方が貴女にも侯爵家にも良いだろう」

 

 「では私も先ほども言いましたが、謝罪をするにも手順も場も整える必要がございます。でなければ、ミゲル様が勝手に謝罪しただけで宰相家としては関知していないと言われてしまえば私としても侯爵家としても到底看過できません」

 

 「それは酷い言いがかりで侮辱だ。宰相家として正式に謝罪を要求する事になるが」

 

 「ほら、ご自分の立場すら理解されていませんのね。手順も場も無視して侯爵家の事を蔑ろにしている事を棚上げして自分本位の謝罪をする方には正当な評価だと思いますが。加害者のミゲル様の発言に何一つ正当性はございません」

 

 侮辱されたと思った瞬間は睨みつけて言外に圧力を匂わせていたが、同格の侯爵家には悪手だろう。しかも加害側なのに強気に出るなんてな。言い返されてしかも正論だと分かると悔しそうに唇を噛んでいる。少しでも傷を浅くしたいのは理解できるが、理論武装していない状態では余計に傷が拡がるだろう。日本人的に言うと、反論せずに謝罪一択の方が多少はマシだと思うんだけどな。それが出来ないからこそ貴族だしミゲルだな。

 

 マルグリット嬢の能面が一瞬睨みを利かせて更に語気を強めた。表情を極力出さない様にしているが故に表れた一瞬の怒りって事だろう。謝罪に来たから少しは変わったのかと思ったら何一つ変わってなかった。

 

 「マルグリット様、本日は卒業パーティーのやり直しです。あの日の出来事はやる必要はございません。気分転換にダンスは如何でしょうか」

 

 あの日を焼き増しする必要も義務もないんだ。折角王家が卒業パーティーを開催してくれたんだ、楽しまなければ損だろう。何より、周りの目にこれ以上晒されたくない。演奏は続いているしダンスも談笑も続いているけど、意識だけはこちらにばっちり向いている。俺たちの周りだけぽっかりと空間ができて、誰も近付こうとしない。俺はそんな場に慣れていないから、多少強引でも逃げたかった。マルグリット嬢をダシに使ってでも。

 

 

 ホールの中央までエスコートをし演奏に合わせて軽く踊ってみる。軍閥だが一応は子爵家だ、苦手分野でも一通りは出来る様に仕込まれている。肩越しに見ると悔しそうにこちらを見ている。

 

 「先ほどはどうして?」

 

 ステップに集中していると、顔が近付いた時を見計らって話し掛けてきた。大雑把な問い掛けだが、何を指しているのかは分かる。棘が含まれている事も。

 

 「格下の同性からと同格の異性から、どちらから反論された方がより堪えると思いますか?」

 

 「……なるほど。私よりも余程厳しい対応ですこと」

 

 「まあ、これでも頭にきてるんでね。それより誰も助けには来なかったですね」

 

 「それこそ今更ですわね。まあ、来ても相手にはしませんけどね」

 

 だろうな。あの時、一度だけだが助けに入らなかったのは決して軽んじて言い訳ではない。これからは大変だろうな。そんな事を考えていると一曲踊り終えてしまった。ミゲルの所に戻る気にはなれなくて反対側のテーブルを目指す事にした。

 

 ミゲルを見ると誰も近付いていない。学生も親も例外ではない。殿下方を見ると誰も近付こうとしてないし話し掛けられても理由をつけて離れていっている。この大きなホールに空白地帯が二か所ある。まあ、誰も好き好んで近付こうとは思わないわな。

 

 

 「謝罪をする事は許したが、何も考えていなかったとはな」

 

 「……父上」


お読み頂きまして誠にありがとうございます。

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