表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/29

王宮にて⑧ ~陛下視点Ⅱ~

裁きをする側である陛下視点パート②です。


ストックが早くも切れて&GWで毎日投稿が無理になってしまった。


脱字修正(令和6年5月8日)

 「殿下については納得致しました。その他はどうなりましょうか」

 

 男爵の意図は分かる。決断をしたのはアレだが、言動に変化が見られた原因の一旦は令嬢だと調べがついている。それに一緒にいた事で恩恵は受けていただろう。原因の一旦であると認識していればこそ、罰はどの様になるのかと。

 

 「ふむ。まずアレの処分を全て話し終えたら他について話し合うとするか」

 

 まだ剥奪としか言及していない。レヴィーノ侯爵たちにはどの様な処分にするかは先に話している。一点を除いて他の処分内容については了承されると思うが。

 

 一.王位継承権を剥奪

 二.臣籍降下で平民

 三.公職からの追放

 四.子々孫々、王位継承権の剥奪

 

 「現時点での処分内容だ。追加、修正があれば聞こう。ただ、レヴィーノ侯爵たちからは概ね同意を得ている」

 

 「……なるほど、そうですか」

 

 アレの処分内容について話し終えたら、男爵は腕組みをして黙ってしまった。自分で決めた事だが重いと思う。予算を無断に執行したとか無法を働いたとかではなく、ただの失言だ。それも学園内での出来事だ。そこまでやる必要はないと思うだろうが、考えうる重い罰にすると態度で示す事で王族との婚約は重大事だと貴族だけでなく国民への再認識の良い機会となるだろう。

 

 「侯爵閣下が納得しているのであれば我らが何かを言う事はございません。では改めて他の者については如何するおつもりでしょうか」

 

 これが本命だ。アレについては王家が直々に沙汰を下す。では、周りの者についてはどうするのかと。不安でしかたないのだろう。これも決まっている。

 

 「特に何もするつもりはない」

 

 「何も!?」

 

 ある程度予想はしていただろう宰相は驚いていないが、他は驚愕の表情だ。それもそうだろう。ここまで学園の中だろうが、決定を無視して断行できると思い込んだ甘すぎる判断に対しての沙汰だ。だから、側近も同様の沙汰を下すと考えるのが当然だ。

 

 「陛下、それでは伯爵たちの不安が増すだけです。説明をお願い致します」

 

 「うむ。先ほど宰相も言っておった様に学園内での出来事だ。看過できぬと判断したから沙汰を下す。だが、沙汰を下すのは王家としてで、国としては承認をしたにすぎん。だから、他の者については各家で判断するが良い」

 

 これは卑怯なやり方だろう。アレに王家として厳しい沙汰を下す。国家としては承認しただけで、沙汰について口を挟んでいない。あくまでも王家と侯爵家との係争案件だと強調するためだ。詭弁だがな。これをする事で各家は判断に迷うだろう。

 沙汰が甘いと他の貴族からは侮られるだろうし、民からの信は失うだろう。それを考えると同じにするか、アレの沙汰を甘くする事で相対的に減らすだろう。

 

 「それはまた厳しいですな」

 

 男爵は気付いたのだろう。王家や国家として一緒に沙汰を下す方が楽だ。命令には逆らえないから従うように、と。そう言い訳できる。だが、それでは駄目だ。こう言っては何だが、王家と貴族では子供の重みが違う。しかもアレは次期国王なのだ。比べるだけ馬鹿らしいというものだ。これを機に侍従長辺りが強烈に側室を押し込むだろうな。だから、お前らにも痛みを分かち合おうという断れない提案だ。

 

 「してどうするつもりだ」

 

 「概ね同じにするつもりです」

 

 「概ね、とはどういった意味だ」

 

 断れないが素直に従うのは業腹と考えてるのは宰相だ。従うが自分たちの意見を反映させたものにする。ま、これが出来ない様では貴族としては没落一直線だろうからな。

 

 「廃嫡にはします。ですが、いつとは明言は致しません」

 

 なるほどな。だが、

 

 「廃嫡にするまでは扱いはどうするのだ?」

 

 「扱いとしては貴族に準じます。廃嫡にする事は決定ですが、執行はしていませんので」

 

 「ふむ、それは逃げではないのか?」

 

 「いいえ。執行するまでは再教育期間に充てます。このままの状態で市井に出せば利用されて国益を損なう恐れがありますので」

 

 「そうか? 先ほどの様子だとその心配はないと思うがな」

 

 

 一瞬顔を顰めたな。アレと一緒にやらかしたから、期待はしていなかったが。理路整然としてとてもアレと暴走していたとは信じられない。

 

 「いえいえ。短い間だけ取り繕う事は出来ても同じ轍を踏む事になるでしょう。それならば再教育を施す事は利に適っていると判断します。加えて、再教育を施す事は侯爵家への罰として捉えておりますので」

 

 「侯爵家への罰? 結果は全て本人のみに帰結するものだ」

 

 応えは分かっているが、確認しなければな。この国では連座制は採用していないからだ。

 

 「それはもちろんです。唯一人で失敗と判断するのは早計ですが、教育の見直しは必要になります。教育の失敗を認めた事になり費用面や時間的にも痛手になります。何より廃嫡した事実がいつまでも残ります。正式に廃嫡後に似た失敗をする際に再教育の無意味さが露呈しない様により一層力を入れるでしょう」

 

 「そうだな。そうなるなら幽閉でも良いかと思ったが重すぎるだろ」

 

 再教育を行うのは当然だな。無責任に放り出せば、それこそ利用される未来が待ち受けているだろう。国内外問わずな。

 

 「では、直ぐには廃嫡せずに再教育期間を設けると。他はどうだ?」

 

 それまで黙っていたドノバン近衛団長が重い口を開いた。

 

 「我が伯爵家は再教育が終わり次第廃嫡致します。再教育について合同を提案致します」

 

 ふむ、合同か。担当者によるが見ようによっては繋がりが強固になりはしないだろうか。だが、一考の余地はあるか。


お読み頂きまして誠にありがとうございます。

『面白い』『つまらない』など評価を是非宜しくお願い致します。


誤字、脱字などの報告や感想もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ