卒業パーティにて
ひっっさしぶりに書いてみました。
「てにをは」「単語」「言葉遣い」 が滅茶苦茶かもしれないですが。。。
婚約破棄から始まる逆転物語って何?からのモチベで書いてみました。
長編にするつもりはない(できない)ので是非読んでみてくださいね!
「マルグリット・ヴィ・レヴィーノ侯爵令嬢と婚約破棄をここに宣言する!」
学園の卒業パーティーの場で、この様な醜聞とも言える一幕が起こった。会は中盤でダンスをしたり軽食を摘まんで談笑したりとまったりとした時が流れていた。今日は学園生活最後の日で、明日からは成人として羽ばたく祝いであり決別の日だ。その様な日に水を差す事を言われたので一様に微妙な顔だ。それは俺も同じだ。卒業パーティーだから宣言する事の意味があるのだろう。きっと。
俺は少し離れた所で談笑していたから野次馬気分だ。直接の関係者でもないから、首は突っ込みたくないってのが一番だ。それでも興味本位で見ると、マルグリット嬢が一人で殿下方を凝視している。いつもの取り巻きは周りと同化している。こういう時こその取り巻きだろうが。誰も次の行動に移せずにどれだけの時間が経っただろうか。沈黙に耐えられなくなりお節介でつい一歩踏み出してしまった。異世界転生のラノベっぽいなってのもあったと思う。
「殿下、お待ちください。皆、突然の事で困惑しております。説明を願います」
学園において慣習や儀礼は存在はするが厳しくはない。だから身分が低い俺が許可を求めなくても発言ができるのだ。曲終わりと殿下の良く通る声が相まって、東屋に耳目が集中しているのがよく分かる。
「お前は反対なのか」
「反対も何も。その権限はございません。しかしながら、何故その結論に至ったのかを知りたく思い発言させて頂きました」
「ふん。分かった」
はっきりと反対をした訳ではないが、空気を察したのか不機嫌さを隠さずに固い声音で説明しはじめた。
曰く、愛する女性を見つけた。
曰く、マルグリット嬢は自分を見下している。
曰く、婚姻相手は自分で決める。
曰く、侯爵令嬢として相応しくない行いをした
等々だ。それは予想通りすぎて驚きはなかった。今まで隠してきたなら驚きもあるが、堂々としていたので周りもある意味納得だ。
「理由は分かりました。それでお相手はナターシャ男爵令嬢でしょうか」
「そうだ。ナターシャこそ王妃に相応しいと思ったのだ」
「そうですか。しかし、その発表は今でなければならなかったのでしょうか。陛下からの発表を待つべきだと愚考致しますが」
「簡単なことよ。陛下も何かとお忙しい身だ。この様な些事に関わっている暇などないのだ。それに今日は祝いの日だ。皆には早めに知らせようと思ってな」
「……左様ですか」
……はあ。婚約破棄を些事とは。頭が痛い。馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、ここまで馬鹿とは。顔が整ってるだけに殿下の言い分が正しいと誤認してしまいそうだ。陛下と侯爵に断りもなく破棄は出来ないだろうに。その先の事は何も考えてないのだろうな。下手したら内乱もあるな。横を見ればナターシャ嬢は嬉しそうに腕に纏わりついているし、隣を見ればマルグリット嬢の表情は消えているし。
「ロレンス、何が不満なんだ。殿下がお決めになった事だ。決定が覆る事なんて良くある。臣下は慌てずに粛々と進めればいいんだ」
「ミゲル様、そうは申しますが事は国政に大きく関わる事でございます。未だ学生の身ならば荷が重すぎます。陛下の判断を待つのが常道かと愚考致します」
「はあ、ロレンス。君も頭が固いな。殿下はこれから国を背負っていかれるのだ。ならば婚約者は自分で決めても良いと思うぞ。国王になったならば我儘は通らないんだ。これが最初で最後の我儘と思えば許されよう」
我儘を言う子供に諭す様に、しかし嘲りの視線を交えて説明をされた。宰相の令息だから、もう少し考えがあっての事だと思ったが。いや、宰相の座が約束されているから深く考えないのか。陛下の決定を殿下が覆せないだろ。それにしても頭が痛い。こんなのに仕えるのが使命だとは。
「頭が固いではなく、道理だと思いますが」
睨むと一瞬怯んだが、隣にいるのはいずれ陛下になられる方だと分かると自信を取り戻して何かを言おうとしたがそれは叶わなかった。
「くどい! 俺が決めた事に異を唱えるな! では、自分はどうなのだ?」
「どう、とは?」
「先ほど、荷が重いと申したな。我の婚約は国の重大事だ。それに口を挟むのは荷が重いのではないのか」
「……は、その通りでございます」
あーー、もう駄目だ。だから陛下に判断を委ねようと言ってるだろうが! ナターシャ嬢に反対はない。破棄が問題なのだ。ここでは言えないが、側妃とか愛妾とかで良いではないか。王妃に相応しいなら、そもそも破棄なんてさせないだろうが。王妃教育はしてないだろうし、男爵が侯爵に楯突くなんて。侯爵家を敵に回すことも考えてるのか。
「ロレンス、お前をいずれは近衛に加えようと思っていたのだがな」
「……身に余る光栄です」
「マイク、良かったな。将来の近衛団長より腕がたつ者が部下にいなくて」
それまで後ろに控えて一言も発していない近衛団長の令息がマイクだ。頭脳よりも体力寄りだとしても性格的にも表には出てこないだろう。力に頼りすぎていて直線的な所はあるけど、一本気で好感は持てたな。しかめっ面だけども。
「場が白けてしまったな。我らは退出するが、皆は楽しんでくれ」
王子様然とした振る舞いで格好良く去っていった。取り巻きも一緒に。見てくれは良いんだから、もう少し考えてくれれば、国民からの人気も出るだろうに。
周りは楽しむ雰囲気どころではなく、帰るでもなく不安でヒソヒソと話している。もちろん話題の中心はマルグリット嬢で視線がチラチラと向いてくる。
「マルグリット様、申し訳ありません。出過ぎた真似を致しまして」
「……良いのです。分かってはいた事です。ですが、陛下にご相談しているものと思っていましたので驚きました。それに、私が申しあげても無駄でしょう。ロレンス様が言って下さり安心しました」
「安心、ですか」
「周りをご覧下さい。誰もが殿下に意見するのは憚れるのよ。私の取り巻きでさえ関わろうとしないのよ。侯爵令嬢と王族、どちらに利があるのか一目瞭然でしょ」
「……」
何も言えない。未だ学生の身分だから出しゃばったけど、学生ではなかったら見て見ぬふりだろう。政略結婚とは言え、王妃教育は何年も前からだ。もう少し我を出しても良いのに。あの殿下の幾分かでも。
「ロレンス様もこれから大変ですわね」
「いえ、私は子爵家です。重要な役職に就いている訳でもないですから、軍で何年か士官したのちに領地に帰ろうと思います」
「……そうではないのですが。まあ、近い内に会うことになると思います。その時までご機嫌よう」
「はい、それでは失礼致します」
それだけを言って去ってしまった。学園内でもそうだったが、最後まで凛とした姿勢は見倣うべきだろう。王妃になったら映えるだろうに。殿下も惜しい事をしたな。だけど民には男爵令嬢との婚約は好意的に受け取られるかもしれない。貴族ではあるけど通常では考えられない身分差なのだ。成立したら吟遊詩人で盛んに謡われるのだろうか。いや、それはないか。まだ破棄が決定になった訳ではないのだ。近々発表されるだろう。それまでは進展はしないだろうな。
聞こえる声で話してたのに誰も近寄って来なかったな。殿下が退出されたのだから、少しでも挽回するべきだろうに。追うべきか迷っているが、今更だな。恨めしい視線を俺にするなよ。王妃候補の取り巻きで良い思いをしたんだろうから、ここで守りにいかないでどうするんだよ。ま、俺には関係のない事だ。それに、去り際にぼそっと呟いたのを聞き逃さなかった。
”誰が敵か味方か炙り出せましたわね”
マルグリット嬢はこの事態を活かすつもりで観察していたのだと分かって震えてしまった。
はあ、いずれは近衛軍と思っていたけど、あの様子だと推挙される事はないだろ。
婚約破棄ルートってどんなイベントだよ。ゲームにこんなイベント盛り込むなよな。製作者の感性を疑うよ。
……ゲームだよな。
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