1.サボタージュの最中、庭園にて。
ここから1章です。
少しだけ、ラーズとミリアの過去に触れます。
編入してしばらくは授業の内容が違うことに対して、かなり悪戦苦闘した。しかしながら一ヶ月も経ってしまえば、潮目というのは変わるもの。
逆に考えれば良いのだ。
そう、諦めちゃえば良いさ、と――。
「あー……だりぃな、ゼクス」
「だな。座学なんて将来、何の役に立つんだよ」
「それなー」
――そんなわけで、俺とゼクスは座学の魔法基礎論をサボっていた。
現在、俺らがいるのは魔法学園の屋上に設置された庭園だ。授業時にここへ足を運ぶ生徒なんていうのは、決まって落ちこぼれの劣等生ばかり。つまるところ、俺やゼクスと同じ穴の狢、というやつだった。
自分たちのクラスでも、特別に疎外感を抱いているわけではない。
しかし、ここはここで居心地がよいのだった。
「そういや、ラーズ。ミリアさんって、お前の幼馴染みなんだよな?」
「ん、そうだけど……?」
「いやー……あんな可愛い子に頼られてるなんて、羨ましいよな……って」
「頼られてる……? いや、座学の小テストで頼ってるのは俺たちだろ」
「いやいや、そういうことじゃなくて!」
そんな穏やかな時間の中で、ゼクスが何の気なしに話題を振ってくる。
俺がとぼけると、彼はツッコミを入れつつ軌道修正。ほんの少しだけ姿勢を正すと、興味本位からだと分かるような口調で訊いてきた。
「どんな出会いだったんだ? ラーズとミリアさん、ってさ」
「別に……ご近所さんだった、ってだけだよ」
「それだからって、ここまで仲良くならないだろ?」
「………………」
はぐらかすと、悪友はケタケタと笑いながら追及してくる。
どうやら誤魔化すことはできないようだった。だったら素直に話してしまった方が、丸く収まるだろう。妙な誤解を生みたくもないし、俺は記憶を手繰り寄せ始めた。
そして、ゆっくりと口を開く。
「まぁ、たしかに最初はご近所付き合い程度だったんだ。だけど――」
本来なら、ミリアから説明すべきだと思いながら。
俺は静かにこう切り出した。
「まだ小さい頃に、亡くなったんだよ。……アイツの親父さん」――と。
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