3.期待。
しゃしゃい(*‘ω‘ *)!!
「あの、魔法水晶での検査なら以前にもやったと思うんですけど……」
「そうですね。でも今回、貴女に使ってほしいのはこちらなの」
「こちら、ですか……?」
ラーズと別れて、ミリアが連れてこられたのは資料室のような場所。やや埃っぽいそこには、様々な書物や魔道具が置かれていた。そして学長秘書であるという女性、シオンが示したのは一つの大ぶりな水晶体。
ミリアが呼んだように、それは魔法水晶というものだった。
使用者の魔力量、さらにはその質を判定し、才能を見極めるために使用される。王都立魔法学園では入学試験時に導入されており、ミリアはすでに経験済みだった。
「でも私、前にやった時は平均以下で……」
「構いませんよ。お気になさらず、素直にお試しください」
謙遜ではなく、事実をそのままに伝える少女。
しかしシオンはにこやかに、柔らかい口調で彼女を促した。どうやら今は、この水晶体での検査ををする以外に選択肢はないらしい。
なので、ミリアは少しだけ遠慮がちにそれに触れた。
そしてすぐに、あることに気付く。
「これって普通の魔法水晶ではない……ですよね?」
「はい、大正解です」
それというのも、見た目こそ普通の魔法水晶だが、何かが違うこと。
どうにも魔力の通りが悪いというべきか、以前の試験で使用したものよりも強固な印象を受けるのだった。これでは、平均的な魔力を注ぎ込んでも反応は薄いだろう。
そう思って悩んでいると、シオンがこう説明した。
「こちらは、より高次元の魔法水晶です。通常のそれよりも数倍の魔力許容量を誇り、未だかつて高反応を示した者はいません」
「え、ええぇ!? どうして、そんなものをどうして!?」
「ふふふ。貴女は期待されているのですよ」
「期待、ですか……?」
「はい」
その言葉に一度、驚きを隠せないミリア。
しかし『期待』という言葉に対して、ハッとした表情に変わった。
「今回の特別編入には、ちょっとした裏がありまして。私の見立てでは、グラドニア学長はミリアさんに多大な期待をされているのですよ?」
「…………」
耳元で、そのように囁くシオン。
そんな彼女の言葉を聞いて、ミリアは小さく息を吸った。
ゆっくりと吐き出し、改めて特別な魔法水晶に手を翳して集中力を高め――。
◆
「あ、れ……?」
グラドニア学長は、逃げるなと言った。
しかし、俺には逃げる暇すらない。ただ身を守るように、高次元な魔法の一撃を耐えようと身構えることしかできないのだ。だけど、それだけで――。
「なにが、どうなっているんだ……?」
彼の魔法は、文字通りに消滅した。
先ほどまであった高次の魔力は消え失せ、何事もなかったかのように時間が流れる。唖然とする俺に対して、グラドニアは少し息を呑むような様子を見せ、しかし笑った。
「あっはっは! 凄い、凄いな!!」
「え、え……?」
こちらの困惑をよそに、彼は俺のもとへ歩み寄って肩に手を置く。
そして、何度も頷いてこう言うのだった。
「これで、確信から現実に変わったな! ラーズ、お前には――」
まるで財宝を目の前にしたように、興奮を見せながら。
「特別な力がある……!」――と。
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