十一話
「あ!リアン、兄貴、ちょうど目的地に行く馬車が出てるみたい。歩くには遠いし乗らない?」
「もちろん。」
「おう。」
アリアは馬車の方まで駆けていった。御者台に向かって大きく手を振る。
「おーい。3人乗っていいかー?」
「中はもういっぱいだよ。」
どうやら馬車はいっぱいのようだ。次のを待つか・・・歩いて向かうか・・・
「屋根は?」
「まだ、空いてるんじゃないか?さっき一人登って行ったがね。」
屋根。そうか、屋根は空いてるのか。
・・・いや、屋根?馬車の屋根に乗るってこと?冒険者的には普通なのか?ヴォルクさんも平然としてるし・・・うーん・・・
「兄貴、リアン、屋根は空いてるってさ。よかったね!」
「う、うん。」
どうやら冒険者社会では馬車の屋根に登るのは普通らしい。
壊れたりしないんだろうか。
「じゃあ乗りましょうか。リアン、先に・・・」
「先どうぞ?」
「えっと、いいの?先に入った方がまだいいところに座れるけど・・・」
「?なら尚更、アリアが先に行くべきだと思うよ。」
「レ、レディファーストってやつ?嘘、やばい、どうしよ・・・」
何やら呟いているようだが早すぎて聞き取れなかった。
アリアが乗った後、私も屋根の上へと登った。
屋根は、立てないくらい曲がっているわけではないがそれでも少しカーブしていてとてもバランスが悪い。
古いのかギシギシと音を立てていて不安になる。
ここ、本当に乗っていいところなのか?
「お客さんがた、乗れたかい?」
「大丈夫ー。」
「あいよ。じゃあ出発するよ。」
馬車はゆっくりと出発した。
のどかな草原を見ていると気分が穏やかになってくる。前から吹く風もとても気持ちがいい。
前はこんなにリラックスできなかったから新鮮だな・・・
「アンタらも、新しいダンジョン行くの?」
のんびりしていると先に座っていた男から話しかけられた。
アンタらも、ということは彼も新しいダンジョンに行く冒険者なのだろう。
フードを深くかぶっていて顔は見えない。なんというか・・・怪しい。
話しかけてきたのは何故だ?
「そうだけど?」
「じゃーさ。俺と組まねぇ?」
そう言って男はフードを外した。
目に入ったのは、炎のような深紅。
そしてこちらをじっと見つめる色の違う二つの瞳。
金と翡翠、二つの色がゆっくり細められる。
「俺ずっとソロでやってきてんだけどさー。今回のダンジョンむずいらしいしアンタら強そうだし?」
「だからって急に話しかけるのはないと思うけど?」
「えーダメ?俺役に立つよ?」
「・・・兄貴、どう思う?」
ヴォルクさんは顔を顰めた。
怪しいけど嘘はついていなかったんだろう。
「まぁ・・・・いいんじゃねぇの・・・?」
「マジで!?黒い兄さんありがとう!」
黒い兄さん・・・・ヴォルクさんのことか?まぁ、服も見た目も全体的に黒っぽいしな・・・
私とアリアは必死に笑いを堪えた。
「ま、兄貴がそういうならいいや。リアンもそれでいい?」
「俺は二人の決定に従うよ。」
「っしゃー!あ、俺はゼノ。アンタらは?」
彼がそう言った途端、ヴォルクさんが微かに目を細めた。
ゼノ、というのは偽名か?
「私はアリア。」
「俺のことはリアンと。」
「アリアに、リアンね。黒い兄さんは?」
「・・・・・」
「黒い兄さんは?名前なんて言うの?」
「・・・・・・」
「兄貴・・・」
「・・・・ヴォルク。」
渋々と言った具合でヴォルクさんはようやく口を開いた。
ゼノのことが気に食わないのかな?怪しいしなぁ・・・
「じゃーよろしく!!」




