二十五話
しばらくたってまた会場に向かうと、反対側にはオースウェン嬢がいた。
こちらに気が付くと、口角を頬が裂けたように見えるほどあげた。
「あら。ロウラン様じゃないですかぁ。うふふ。運がいいですわぁ。」
気色悪い話し方。
以前はこんなんじゃなかった気が・・・
「それでは試合、始め!!!!」
今までの授業を見ている限り、彼女が私に勝てる可能性はほぼない。
いつも通りやればかて———
「勝てるって思いました?確かにこの試合には負けるかもしれませんが・・・」
濁り切った目がこちらを捉えた。
「最後に勝つのは、私。」
「?何を言って・・・っ!!」
まだ詠唱をしていなかったのに、魔法が飛んできた。
急いで回避し、鑑定する。
その属性は・・・
鑑定不能。
私の知らない、未知の属性。
もしくは・・・
「禁忌魔術・・・。」
「あら?正解!!お詳しいんですね。」
「どこからその魔術の知識を手に入れた!?っ!今すぐ使用をやめなさい!!じゃないとあなたの体は・・・!!」
ニタニタの笑っていた彼女は、急に真顔になった。
「私の体が・・・なに?」
急に地面から赤黒い蔦が出てきた。
回避できず手足を拘束され、地面に叩きつけられる。
「っ!」
「いい気味ね。それで?私の体がどうなるっていうの?」
「それは・・・」
「答えなさいよ!!」
彼女はナイフを振り上げ、私の腕に突き刺した。
「っ・・・!!!」
腕からは血が多く出て、感覚がなくなってくる。
熱い・・・。
早く、回復を・・・
ナイフが抜かれ、再度腕に刺された。
「っ・・・つ!!!!」
「早く・・・答えなさいよ!!」
「それは・・・できない。」
「・・・・・えぇ。えぇ、そうでしょうね。知ってますよ。知らせることは法律で禁じられていることも、いつか私の体が壊れるってことも!!!!」
知っていたのに・・・なぜ・・・。
だめだ。
痛みでうまく思考できない。
「でもねぇ。あいつは言ったのよ!!私なら、あいつなら!!壊れずにいられるって!!私の望む力を!!カミサマからなんの罰も受けずにえられるって!!私は壊れない。絶対に。・・・・・・・まずはあなたから殺してあげる。邪魔なのよね、あなた。・・・・・・この世界は、私のためにあるのに・・・。」
至近距離から、顔に魔法が放たれる。
急いで回避したが、頬に掠ってしまった。
深くきれていないはずなのに、なぜか血が多く流れる。
おかしいな。
一体どうして・・・
「っ!!」
痛い。
頭が割れるように痛かった。
痛い痛い痛い!!
な・・・に、が・・・起こって・・・
「これで私は最終的に勝つ。あなたの負けは確定したの。残念だったわね。」
痛みが急に治った。
でも、なんだか違和感がある。
なんだ・・・?
手足が解放された。
私は急いで立ち上がる。
「せっかくだもの。余興を開こうじゃない!!」
彼女は右腕をあげた。
その腕には小瓶が握られている。
薬・・・?
彼女は勢いよく振り下ろし、小瓶を地面に叩きつけた。
パリン、と小瓶はわれ、中から薄桃色の煙が出てきた。
甘ったるい匂い。
まさか・・・
「魔・・・香?」
「せいぜいもがき苦しみなさい!!」
ガシャァァアアアアン!!!!
大きな音と共に、会場の壁が壊された。
外から、大量の魔物が入ってくる。
「全員退避!!戦闘可能の者は戦闘準備!!!」
私は大きな声で叫んだ。
あたりで教師たちも叫ぶ。
「生徒たちは退避せよ!!」
「保護者の皆様も退避を!!!」
阿鼻叫喚。
教師だけでは戦闘力が足りない。
彼らが弱いわけではない。
魔物の数が多すぎる。
「先生、侯爵家以上の者は残すべきです。彼らには魔物との戦闘、民を守る義務があります。」
「わかった。」
「では、私が貴族の者を指揮しよう。」
「父上!!」
ファルター・デューク・ノヴェユール・・・私の父だった。
「こ、公爵閣下!!」
教師は慌てて敬礼をする。
「すぐに、戦闘に参加するものを集めよう。ロウラン。」
「はい。『彼の者の声を大きくせよ。拡声』」
これで父上の声が大きくなるはずだ。
学園での、大規模戦闘が始まった。




