十二話
「まず簡単に自己紹介からいきましょうか。」
そう言ってそいつはにこりと笑った。
「改めまして、ロウラン・デューク・ノヴェユール公爵令嬢です。」
「・・・は?自己紹介ってそれだけ?」
「えぇ。あぁ、私のスキルは・・・」
俺は一応スキルを発動させた。嘘をつくとは思えないが念のためだ。さて、こいつのスキルは何だ?予想がつかねぇ。
「私のスキルは『完全複製』というものです。」
「完全複製?」
「見たものならなんでも、完璧に再現できます。技も、魔法も、スキルも、見た目さえも、ね。」
「なっ!」
やばいスキルだ。ありえねぇ、そんなスキルがあったなんて聞いたことねぇ。
信じられなかった。
でも俺のスキルは事実だと告げていた。
通りで強いわけだ。完全に再現できるなら最強と言っても過言ではない。多分今確認されてる中では一番上位のスキルだろう。
「信じられなければ、今ここで使って見せましょうか?」
そう言ってそいつは目を瞑った。その瞬間、黒い霧がそいつを覆った。しばらくして霧がはれると・・・
俺がいた。
「・・・は?」
そっくりだ。何もかもが。
これが、こいつのスキルか。完全に再現できてる。
驚いていると、そいつが俺に俺の声で話しかけてきた。
「お分かりいただけましたか?これが、私のスキルです。」
「俺の声でその喋り方は気持ち悪りぃ。」
「そうですか?」
「その見た目でお前の笑い方されんのも気色悪りぃ。」
そう言ったらそいつは俺と同じ笑い方をして、
「そこまで言うならしょうがねぇな。これで満足か?あ゛?」
俺と同じ喋り方をした。
さっきの気色悪さはなくなったが、さっきまで敬語だった奴がその喋り方をすると違和感がやべぇ。
「俺はこのスキルを使って金稼いでたんだよ。」
俺は首を傾げた。どういうことだ?
「本当の俺の姿だと商売とかに不便でよぉ、困ってったんだが・・・」
「?」
「あるとき倒した魔物の魔法の一つに幻影術があってな、そのスキルを頂いたんだ。」
そう言ってそいつは目を閉じた。また霧がそいつを覆い、霧が晴れた時には元の姿に戻っていた。
「やっぱり慣れない姿は疲れますね。」
「喋り方もだろ?」
「ん?いいえ、ああいう喋り方はときどきしますけど。」
「は?」
「言ったじゃ無いですか、幻影術を頂いたって。」
そういうことか。こいつは多分魔物とかを売って金を稼いでいたんだろう。だがそのまんまの姿だと売ることができねぇ。子供の姿だと魔物を狩ろうとしても止められる。だからこいつはてきとーに大人の姿になって魔物を狩って売ってったんだろう。
通りであんな大金ポンッと出せるわけだ。
「もともと私は戦闘力も今よりは低かったんですけどねぇ。」
「何の冗談だ。」
「冗談じゃありませんよぉ。」
うそくせぇー。スキルが言うには事実らしいけど・・・。
「そういやぁテメェ、なんで全属性使えやがる。」
「元々は水、風、闇だけだったんですよ?でも魔物倒して、スキルとか魔法とか頂いて、また魔物倒して・・・ってやってたらいつの間にかねぇ。」
いつの間にかってこいつ・・・。
ドッと疲れが襲ってきた。
「あ、もしかしてまださっきの魔法の効果が続いてました?」
「ちげぇよ。」
こいつ頭いいくせにずれてやがる。お前のせいだっつうの。
「まぁ、病み上がりみたいなもんでしょうし、そろそろ私は「まだ質問はある。」
「えぇー・・・。」
「もし自分に困ることがあったらって言ったな?」
「えぇまぁ。」
そいつは困惑した表情でそう答えた。
「テメェは何かあることを、確信してんのか?」
「・・・どうしてそう思ったんです?」
「テメェの言い方だ。」
そう言ったらそいつはボソリと何かを言った。
「言葉を間違えたか・・・」
「?」
「いえ、なんでも。確信はしてませんけど。なんとなくそんな気がしたので。」
嘘は言ってない。でも全てを話してはいねぇ、ってとこか。
「チッ、今はそれで満足してやる。」
「どうも。」
「聞きたいことは今んとこもうねぇよ。」
「そうですか。あ、さっきの魔法、毒みたいなものなのでちゃんと薬飲んでくださいねー。」
「はぁ?テメェそういうことはもっと早く言いやがれ!」
「はは、すいませーん。」
そう言ってそいつは笑いながら去っていった。
俺はボソリと独り言を呟いた。
「しっかし変なやつだなぁ・・・」
この時の「条件」のせいでいろんなことに巻き込まれることを、この時の俺は知らなかった。




