十話
私たちは校長室へ向かった。ヴォルクさんが学校の物をいくつか破壊してしまったからだ。
「失礼します。少しよろしいですか?」
「ん?あぁ、君か。いいよ。」
どうやら書類仕事をしていたらしい。校長先生は書類を机の端によけ、こちらに笑みを向けてきた。
「Sクラスの生徒に絡まれたんだってね。」
「えぇ、そのことで少しお話が。」
「何かな?」
「大したことじゃありません。相手の方がここの物をいくつか破壊してしまったのですが、その方は今医務室にいまして。」
「ほう、それは請求書を渡さねばだね。」
校長先生は楽しげにそう言った。
「私が渡してきますよ。」
「そうかい、では頼もうかな。」
私はにこりと笑った。
「えぇ、お任せください。」
「しかし・・・、相手の子は怪我をしたのかい?」
「いえ、召喚獣の魔法で眠っていただいただけです。」
校長先生は目をキラリと光らせた。
「召喚獣か。素晴らしい。見せてもらえるかな?」
私は苦笑しながら答えた。
「ええ。『召喚・胡蝶』
美しい、魔力で形取られた蝶たちがあらわれた。
「あぁ、素晴らしいね。これは・・・」
「何属性か、お分かりになりますか?」
そう聞くと、校長先生の碧眼が片方だけ金色に変わった。
校長先生は、光属性が得意らしい。金は光属性の魔法の色だ。
「『魔力視』」
しばらくすると、校長先生はいつもより早いスピードで話し出した。
「これは凄い。青の蝶は水属性、紫は闇、緑は風、赤は火、黄土色は土、金は光。全ての属性の召喚獣を一気に呼ぶだなんて素晴らしい。空を飛べるから攻撃も回避もできるし、全属性いるならどんな魔法も使える。本当に素晴らしい召喚だ!」
「先生は、何属性を主に使いますか?」
校長先生は困惑しながらこう言った。
「僕かい?僕は光属性を良く使うけど・・・?」
『魔法贈与・金光の胡蝶』
校長先生は大きく目を見開いた。
【魔法贈与・マナギフト】その名の通り、自分の使える魔法を指定して、その魔法を相手も使えるようにする魔法だ。複数の属性を掛け合わせればオリジナルの魔法を作れる。魔法使いにとってオリジナルの魔法はとても重要だ。だから普通オリジナルの魔法を相手が使えるようになんてしないのだ。オリジナルの魔法のレシピ(属性の掛け合わせ方)は秘匿し誰にも教えないことが多い。だから校長先生は驚いているのだ。
「いいのかい?これは君のオリジナルだろう?」
「いいんですよ。先生は魔法がお好きなのでしょう?ならこれは先生は知っておくべきです。」
「そうか・・・。ありがとう。大事に使うよ。」
「是非ともアレンジをして、先生のオリジナルにしてください。」
「はは、これをアレンジするのはなかなか難しそうだなぁ。」
「きっと出来ますよ。魔法が好きな先生なら。」
「頑張るよ。それじゃぁ、これ、よろしくね。」
校長先生は請求書を渡してきた。なかなか凄い額だ。
「新入生に喧嘩を売るなんて続けられちゃ困るからね。それへのお説教も兼ねて、だよ。」
校長先生は片目を瞑りながらそういった。
「なるほど。では、きっちりとってきますね。」
「あぁ、頼むよ。」




