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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
二章
7/50

~出会い~ 1

 マツは人界で野宿できる場所を探していた。


マツ:低木の中、ビルとビルの間、公園のベンチ、車の下、♪あの子のスカートのなk─────ゲフン


マツは正気を失わぬ様に時折ジョークを自分に掛けて保っていた。

気付けば空も黒くなり、街灯のみが場所を把握できる唯一の頼りになった。


マツ:...もう嫌だ、人間から変な目で見るし、餌も(ろく)に得られない。このまま死ぬのか、死ぬ以外何も出来ないのか...。


マツは疲れはてて、店の前でぐったりしてしまった。

(しか)()(さま)店員(てんいん)がやって来て泣く泣く追い払われた。

仕方なく低木であるサツキの中に入り凌いだ。

枝が体に刺さり転寝(うたたね)すら儘ならなかったので旭が昇るまで起きることにした。

 サツキの木漏れ日を浴びつつ、痛々しい低木から脱け出すタイミングを見計らった。

足音が徐々に増え、(まば)らでもなく密集していない絶妙な時間をじっくり(うかが)った。

その日は日曜日、礼津市の面積は(あまね)く186平方km程ある。

場所によっては区々(まちまち)だがマツが辿り着いた鷹緒(ようしょ)駅の付近は中心駅から少し遠めだがまぁまぁ人だかりであった。

丁度目の前で乗用車が停止したのでマツは車の下に入り込んだ後、素早く道を抜けて建物の陰に移った。

その瞬間、自分はさっき(まで)駅前の広場で一夜を過ごしたことに気付いた。

マツはあまりの人の多さに驚きよりも絶望を感じてしまった、より注目されやすい状態に陥った為だ。

待てと待てと、丁度いい混み具合が現れることはなく、やけくそになって人々の足をすり抜け乍ら(また)放浪をはじめた。

 何処まで歩いたか定かではないか、もう隠れる場所も限られていて自分のいる場所さえもこうなったら分からなくなっていた。

マツはビルとビルの間に寝そべった。

飢餓になった以上動けない。



『ドクダミデモイイ

ヨモギデモイイ

ヘビイチゴデモ

ワルナルビデモ...。


ケレドモヤツバリ

ノドヲウルオス

オミヅガホシイ

イノチガホシイ』マツ



マツは自分の犯した過ちを思い出し乍ら、何気なくポエムを口ずさんだ。

やっとのことで睡魔が襲い、ゆっくり目を閉じた。


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