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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
六章
41/50

~血の金曜日~ 5

 後藤家が住むアパートに入り、住んでいる部屋へと向かう為数字を頼りに3人は探っていた。

そして自分の住む部屋に到着したが、妙に不穏だった。

ドアは半開きで、そこから両親と他の誰かが言い争っている様な声が幽かに聞こえていた。

ハヤトは少し離れた場所に移動し、その場でブルブルと(うずくま)ってしまった。

タンポポはそれを見て一刻も早く真相を突き止めないと、と思い恐る恐るドアの隙間を覗いた。

 公木と琴華は()先生と揉めていた。

というのも、李先生は単純にユウタの訃報を伝えに態態(わざわざ)足を運んだだけだったのだが両親はユウタの死に理解が出来ず、デマゴギーだと一点張りして揉めていた訳だった。


李:お気持ちは分かります、ですが亡くなったのは事実です。

公木:証拠あんのか!ユウタが死んだ証拠でもあんのか!

李:…。

公木:もっと探せよっ!!ユウタはどっかで泣いてるんだ!!念入りに探せよ!!

琴華:警察からの電話もありませんし、死んだなんで有り得ないですよ!

李:…今、職員に連絡して遺品や現場写真をメールで送れるか検討してますから。

公木:早くしろよ。

李:あ…届きました、こちらです…。


李のスマートフォンに写っているのは、土壌(どじょう)の更地で襤褸雑巾(ぼろぞうきん)の様に放置されたユウタの現場写真だった。

然し当然の様に疑問を投げてきた。


公木:DNA、一致してるよな?

李:これから行う予定です。

公木:…ならこの写真は信用できん、ちゃんとした記録が無い限り貴方をペテン師と捉える心算(つもり)です!


李は何も言えなくなり、一旦引き下がる事にした。

別れの挨拶をし、深くお辞儀をした後に李は玄関を出た。

と、そこでタンポポと山野は李先生はと目が合った。


タンポポ:…すみません、盗み聞きしました。

李:大丈夫だ、それよりヒロトの調子はどうだ。

タンポポ:自宅で落ち着いて過ごしている、だけど幻覚が時折起きているらしく(たま)に暴れている。

李:成る程…ところで君の隣にいるのは?

山野:あ、6年2組の山野(やまの) 倖吉(ゆききち)です。ハヤトの友達です。

李:ハヤトのご友人ですか、これは失礼。お2人はユウタについて、何か聞いてますか。

山野:ああ、茶狐先生から聞いた。無惨な状態で見つかったらしいですね…。

タンポポ:私、まだ弟の遺体を見ていないんですが…どの様に棄てられたんでしょうか。


李は上方を見た後に(ゆっく)りタンポポの方に向いて話した。


李:頭の後ろに痣があった、それ以外の怪我はなかった。そして体中に虫が群がり、服も皮膚も千切れていた。


それを耳にしてしまった山野は虫酸が走ってしまい、その場で嘔吐してしまった。

タンポポは弟がどれ程無惨(むざん)な状態で発見されたのか良く分かった。

李は学校へ戻り業務の続きをしようと真っ直ぐ階段へ向かおうとしていた。

すると丁度ヒロトの近況を確認しに来た蒲生(かもう)先生と遭遇した。


李:あ、お疲れ様です。

蒲生:こちらこそ、ところで何故ここに?

李:電話しようと思ったら繋がらなくて、仕方無く直接訪問してきました。

蒲生:何を?

李:…ユウタが亡くなった事を。

蒲生:成る程、(さぞ)苦労しただろう。あの家族、どうも気が荒くなりがちでヒロトが大怪我を負った時もボロクソに言われたもんですから。

李:それは仕方ない、妻以外化け狸ですから。

蒲生:李先生、何故その情報を。


李はポケットから折り畳んだ一枚の紙切れを取り出し、それを広げた。

話によれば、どうやら死の数日前に廊下に落ちていたという。

そこには、ユウタが書いたとされる文章があった。


『どうしてぼくのとーさんはばけたぬきなんだろう

かーさんはばけたぬきではないのはなんでだろう

おにいちゃんはいじめられている いたそうなきず

つけたままかえってくる ばけたぬきはわるいこと

したのかな?ばけたぬきはわるいものなのかな

ばけたぬきをいい子いい子していたあの子はしんだ

ばけたぬきをいい子いい子したらしんじゃうの?

なんでだろう わるいことなのか?ぼくはかなしい

ぼくたちはわるい子 わるいばけたぬきの子なのか

ぼくのおじいさんはかちかち山かな?それとも

ぶんぶくちゃがまかな?ぼくはいい子になりたい!

しにたくない!ぼくはなん─────』


文章は千切れた状態で見つかっており、肝心の最後の一文が読めなかった。

然し、李はこれを見て後藤一家に危機が迫ってる事を把握した。


李:恐らく…手渡しで届ける心算(つもり)だったものの、何かの拍子で落としたものかもしれない。

蒲生:恐らくな。


李は紙切れを再度畳み直しポケットに仕舞った後、そのまま階段を下った。

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