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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
五章
33/50

~歯車が壊れる頃に~ 8

タンポポ:あの…そこのテーブルにある桐箱って何ですか?

翔狸:あぁ…──────これね、実を言うと……、弟の(ひつぎ)なんだ。

誉狼:君も知ってるかもしれない、善狐(よしなり)は首を切断された状態で見付かったんだ。だから、頭部のみを死に化粧させて、それ以外の腕や胴体は(あらかじ)め腐敗しないように洗ったり薬剤を塗ったりして別の棺に仕舞ってるんだ。

翔狸:本来なら親戚以外は顔合わせさせる心算(つもり)は無かったけど…最後に別れを告げたいならば親と相談する。


と、父親の洗熊がやって来て翔狸は友人達に顔合わせして良いか交渉した。

洗熊は少し悩んだ末、友人達に手招きした。


洗熊:…さっき息子たちが言った通りだ、エンバーミングしt……保湿剤を塗ったりしているから綺麗に保たれていてグロくはない、だが所詮は生首だ。無理だけはするな、分かった?


そう言った後、誉狼に開封の仕事を任せた。

一同、どの様に保存されてるか好奇心と同時に不安もあった。

誉狼の周りにきちんと集まってるのを確認した後、誉狼は丁寧に正方形の桐箱の蓋を開けた。

そこには、美しく保湿や消毒を施された善狐(よしなり)の生首があり、生前好んでいた蒲公英のドライフラワーが緩衝材として詰められていた。

(あたか)も眠ってるかの様な保存状態に一同は笑みが溢れたが、矢張死んでることに変わりが無いことを悟ると余計に悲しみが込み上がり、口を覆ってしまう程言葉も失いかけてしまった。


内村:…この後、この子をどうするんだ。

誉狼:胴体の入った棺と一緒に密葬する予定だ。

河岸:ありがとう…君のくれた狸の()(ぐる)み、大事にするから。

塩〆原:守れなくて…ごめん…許してくれ…。

ヒロト:...せめて君に、僕の狸姿を見せたかったし、毛の感触を感じさせたかったし、生きてる内に色々したかった。ごめんね僕、弱かったよ…。


誉狼はきちんと拝見し終えてるのを見てそっと蓋を閉じ、ダイニングテーブルに置いた。

誉狼は正直、何度も見ても死んでるのが信じられなかった。

一同は遺族に深く御辞儀をした後、玄関へ向かった。

ヒロトは用意してくれた麦茶で頓服薬を一つ飲んだ後、急ぎ足で追った。

靴を履き玄関のドアを開けた、そこには一台のミニバンが門前に停まってあった。

それは河岸さんの車で、父親がお迎えに来ていたのだった。

河岸は後藤兄弟に同乗するか問い掛けた。

後藤兄弟は心身疲れていたので乗ることにした。

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