~歯車が壊れる頃に~ 7
玄関を開けると、そこに兄の“誉狼”と父親の“洗熊”が私服姿で立っていた。
月見里:お邪魔します。
誉狼:皆様は善狐のご友人とお聞きしました。
洗熊:本当に…来てくださって有難う御座います、嘸かし御苦しいでしょう。
内村:…はい、お悔やみ申し上げます。
誉狼:取り敢えず上がってください、今飲み物を用意します。
ハヤト、ヒロト、タンポポ、塩〆原、月見里、河岸、内村の一同はリビングに集まっていた。
ダイニングテーブルには少し大きい正方形の桐箱、頬杖をし乍ら睨む中学生である“翔狸”さんがいた。
翔狸は暫く彼らを見た後、徐に立ち上がった。
塩〆原:…突然顔合わせをお願いして済みませんでした。
翔狸:否、謝る必要はない。寧ろ光栄だ、彼にこんな沢山の友人が出来ていたことに一安心している。
月見里:と…言うのは。
翔狸:この中に知ってる奴もいるが、弟と俺の兄は自閉症スペクトラムを患っている。世間から“変な奴”とか“良く分からない人”とか言われてて兄は可也苦しい思いをした。その証拠に背中にえげつない痕が残ってる。弟も同じ苦しみをしていて何か隠してないか心配だった。
内村:翔狸さん…実を言うと、僕の妹も自閉症を患っているんです。名前は“白狐”といって、近い内誕生日を迎えて8歳になるところです。
翔狸がそれを聞き頷いていると、誉狼はお盆の上に数人分の麦茶を乗せてダイニングテーブルの上に置いた。
誉狼:お前、俺の黒歴史語っただろ!やめてよ、あの時真逆先生もグルで見て見ぬふりにされてるのを忘れようとしたのに…。それに、まだ話していなかったけど、物を隠されたり定規で背中やケツに引っ叩かれたって言ったけど...それだけじゃない!頭上に画鋲を鏤められたり───。
翔狸:げふん。んで話を続けるが、学校にあった遺品から学校生活は順調で、問題無かったことが何よりの幸せだったんだ。
誉狼:───行き成りゴキブリを食わせようとしたり、その…小学生の前で言っちゃなんだけど、えぇーと…上の人に…下品なことをされたんだぞ!!後それと───。
翔狸:然し、真逆あの猟奇的な事件に巻き込まれた事を知った時は……時が止まったがのような…感覚が見に感じたんだ。
誉狼:───ああ兎に角、口が止まらない程怒りがこみ上げてくるわ!…済まない、弟の話をしていたんだな。正直、何故何の罪のない善狐が…と思ったよ。
一同は翔狸の話を終始静聴した。
そして内村は翔狸と誉狼に質問をした。
内村:少し話は変わりますが、僕たち…特に後藤一家や僕の妹などは今後どうすれば良いでしょうか。
翔狸:単純だ、逃げ延びろ。そして周りに流されてはならぬ、争ってはならぬ。兎に角逃げろ。
誉狼:善狐…間違えた、善狐は立派な兄だ。きっと妹“白狐”を守れると信じているぞ。
然し、タンポポはどうしてもダイニングテーブルに置いてある桐箱が何なのか気になって仕方なかった。
そして迷いなく問い掛けた。




