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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
五章
30/50

~歯車が壊れる頃に~ 5

李:大変です!多目的室から破裂音が聞こえたっと通報がありました。

蒲生:生徒の安否は?

李:生徒によれば、3人が…。

蒲生:嘘だろ…また犠牲者が出るなんで。

鈴木:取り敢えず警察をお呼びしましたので…どうしますか赤川さん。


赤川校長は椅子に座り込み、腕組みしつづ必死に考えていた。

職員達は恐怖に怯え(なが)らも一刻も生徒の安全を確保しようとチラホラ話し合っていた。

ところが藪から棒、火災警報が学校中に鳴り響いた。

そして戸を強く叩く音がした。

倉野先生が代表として恐る恐る開けてみた。


倉野:こんな時にどう───

北條:ハァ…ハァ…タス…ケ…テ……

風早:ゲホッ!!突然…窓か...ら...瓶が......ゴホぉ!ヹっ!それで…火が…一気に......。


話によれば1年1組の教室の窓に目掛けて数本束ねた火炎瓶を投げてきた人がいたらしく、教室中は瞬く間に火の海になり半数以上がパニック状態の(まま)急性(きゅうせい)一酸化炭素(いっさんかたんそ)中毒(ちゅうどく)に陥った。

2人は教室に入ろうとした時に被害に遭い、教室から放出してきた一酸化(いっさんか)炭素(たんそ)をうっかり吸ってしまい今に至っている。

蒲生先生が駆けつけると、窓から燃え上がる炎が二階まで達ししており数名の悲痛な叫びが聞こえ(まさ)に文字通りの地獄絵図だった。

生徒全員を校庭に避難させて安否を各担任が確認した。

そして命からがら逃げることに成功した1年1組の生徒も覚束(おぼつか)無い様子で(おもむろ)に向かってきた。


ハヤト:ユウタ!大丈夫か!

ユウタ;…おえぇ!!吐きそうだ…。

タンポポ:やっぱ吸ってしまったみたいだね。

ヒロト:みんな、無事なのか?!

ハヤト:いや、ユウタの調子が…。

タンポポ:早く!先生を呼んで!


ユウタはタンポポの体に(すが)り乍ら先生の元へ向かった。

1年1組の生徒は(わず)かしか校庭に来ておらず、酷く(どよめ)いていた。

消防車、救急車、パトカー等のサイレンが四方八方に鳴り響き、黒煙も校舎の高さを遥かに超していた。

と、警察の叫び声が唐突に聞こえた。

その直後、男の声で

“放せぇ!!バカは死ななきゃ損するんだぁ!!バカは殺さなきゃ世界は終わるんだぁ!!”

(あら)らげた様子で訴えていた。

どうやら犯人を捕らえる事に成功したのこと。

取り押さえられたのは、未明に目を盗んで警察署から逃走してきた菅野(かんの)容疑者だった。

菅野は礼津市(れいつし)連続(れんぞく)斬首事件(ざんしゅじけん)の主犯グループの一員で、犯行の助長、武器や道具を提供した疑いにより追われていた男だった。

安心するのも束の間、燃える校舎から虫の息で助けを呼ぶ生徒の声が聞こえ人々は張り裂ける様な感情で鎮火を待たないといけなかった。

幸いにも、1年の教室2室と一階の一部のみが焼けた程度で済んだ。

然し突然の大火(たいか)だった為1年1組の生徒12名が教室内で、6名が搬送先で帰らぬ人となり、更に他学年を含む23名が一酸化炭素中毒による重軽傷を負う大惨事となってしまった。

結局、真面(まとも)に授業を進められる環境ではないので、朝っぱらから下校を下された。

校庭は悲惨さを物語るように阿鼻叫喚と化していた。

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