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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
一章
3/50

~始まり~ 2

 一族で長を務めるマツは大きな切り株の上に腰掛けた。

そしてマツの一声でゾロゾロと皆を周りに集合させた。


マツ:君たち、今日の作戦をしよう。

先ず、整備が乏しい山道で標的を探す。

大きなリュックサックを抱えてて且つ少人数、1人から3人ほどだ、そんで腰が曲がり荒く呼吸しており大きく揺さぶってる人を選べ。

ガキは騒ぎやすい、物品の窃盗よりも先に口を押さえ付けて、とにかく森の奥まで引き摺り込め。

そして中身とアクセサリーを無駄無く探り貴重品や宝石、ブランド品らしき私物を奪った後一目散に逃げよ、つまりいつもの事だ。

分かるな、標的には命を奪うのは勿論、傷一つ残すな、骨折や内部損傷なども例外じゃない。


皆は揃えて「はい」と力の入った返事をした。

一族は山道を見下ろせる場所へ移動し、マツの妻であるチゴユリは宙返りをして人間に化け、紙切れを地図に見立て山道の端であたふたしてる演技をし始めた。

それ以外のマツとその兄弟にあたるミズナラとヒノキ、ヒノキの妻であるフキ、マツの子供のアヤメ、アオイ、アケビも人間に化け、木の上や岩の物陰などに隠れた。

と、遠くから砂利の音が聞こえてきた。

中肉の男性、パッと見れば不惑位の年頃だろうか、白いラインの入った深緑のリュックサックを背負って、手には稍古びた魔法瓶が握りしめていた。

恐らくもうすぐ一休みの為に立ち止まったり居座ったりすると化け狸一族は思った。

予想通り、山道の端で足を止めてリュックサックを漁り始めた。

その隙にチゴユリは(おもむろ)にゆっくり男性へ近づいた。


チゴユリ:...今日は雨模様(あめもよう)ですね、大丈夫でしょうか?

男性:?...ああ、そうだな。ここは天気がよく崩れるって聞いてるからな。だから手短に登山して手短に降りようと思ってる。

チゴユリ:あの、私、ここ登るの、初めてなん...です。それで...その、今いる位置が、実は、よく分かって...いなくてですね、その、も...し差し支えがなければなんですか...。

男性:そうですか、つまり現在地から頂上までの道筋を教えてくださいと?

チゴユリ:はい...申し訳ございません。

男性:大丈夫や、ここには何度も行ってますので。ところで今君が持っていますこの地図は......まぁ少し古めですか道筋は向かって右に曲がっt─────


一族は一斉に男性を襲い掛かった。

()()()()()()()は男性の両目と口を押さえ付けた。

男性は何事だと大暴れした。

けれど、そうしてる間にフキがリュックサックを力ずくで奪い、更に後を追う所を()()()()()()()()()が妨害して時間を稼いだ。

男性が子供たちを追ってる内に森の奥まで来てしまい、流石に遭難したらいかんと已む無く引き換えす事にした。

 一族は縄張りに集まり、リュックサックの中を漁った。


チゴユリ:どうやら、上手くいったみたいね。

フキ:そうだね、では早速調べましょう。

アオイ:んー、ガイドブックと───何かの手帳?が入ってるな。

アヤメ:これは熊鈴かしら?


チリンチリン...


ミズナラ:財布の中身は小銭いっぱいと2枚の1000円札、後は何かの紙切れ3枚...だけ!?糞か、ハズレ引いたみてぇだ。

ヒノキ:まあこんなもんよ兄さん。

チゴユリ:中身はこれぐらい...かな、後は弁当と水筒だけだし。

アケビ:ちょっとは凌げた気がする。

チゴユリ:そうだね、ところでミズナラ。マッチャンは何処に行った?

ミズナラ:そういえばマツの奴、遅いな。リーダーのくせに迷子だなんてあり得ねぇな。

ヒノキ:最初集まった時はいた筈だったんだけど...。


 マツは何処へ行ったか、実は人界の住宅地にこっそり来ていたのであった。

と言うのも、近頃(ちかごろ)別の山道の整備が良くなり安全であると多くの人間が其処(そこ)の道を利用してる為、拠点としている大きな獣道に来る人が年々減ってきている。

更にいえば、その獣道で山賊に遭うという情報がどうやら広く知られており一層困難になっていた。

なのでマツは新たな試みで空き巣を行おうとしていたのだ。


マツ:皆に黙って抜けて、一人空き巣を試みていたとは...─────誰も言えねぇ。


マツは標的の家の周囲を見渡した。

昼頃なのか、馬鹿みたいに静かだった。

ここから少し許り離れた所に大通りがあるにしても流石に大型トレーラーの走行音さえ聞こえない。

マツは毛髪を2本抜いた後、それを小刻みに振った。

毛髪はピンと真っ直ぐ硬くなり針になり、マツはそれを鍵穴に入れ、ピッキング行為を始めた。

マツは(ふもと)辺りにある図書館で小説を読み、そこでピッキング行為を知った程度なので片方の針を鉤の形にせず只ひたすら開錠するまで鍵穴の中をいじくり続けた。

...しかし幾ら試しても一向に開錠できないのでマツは次の手に移ることにした。

マツは思い切って小石を握りしめ、テラスの窓ガラスへ放り投げた。

割れた所から手を伸ばし、クレセント錠を開けて侵入した。

リビングダイニングにはこれといった物は無く、マツは廊下へ真っ直ぐ行き他の部屋を探した。

一階にある洋室のドアを開けると、そこは大きい寝具のある部屋だった。

マツは大きい寝具と向かい合わせになっているドロワーを注目し、それを物色した。

上段から開けてみると真珠のブレスレットや紅く煌めくネックレスがあったのでマツはそれを衣嚢(いのう)仕舞(しま)った。

次の引き出しからは誰かの通帳が入っていた。

然しマツは次の引き出しに移った、何故なら彼は通帳の価値感を知らなかったからだ。

彼は骨董品や宝石が高く売れる事ぐらいしか知識が乏しかった。

全ての引き出しを確認し、装飾品5つを手に入れた。

そして部屋を出た後、一階にある部屋全てを廻った。

マツは二階に上がって物色するか迷いながら、結局寝室で盗んだ装飾品だけを手に家の玄関から出た。

マツは何食わぬ顔で森へ戻ろうとした時、思わぬ出来事が起きた。

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