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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
五章
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~歯車が壊れる頃に~ 2

 北野は、棄てられた仔犬の様な目で歌内を見ていた。

歌内は肩の力を落とし、疑問を問い掛けた。


歌内:北野、何泣いてる。

北野:ぅぅ...かちぐぃ.........かちぎがぁしんだぁ......。

歌内:勝木?あぁ、昨日殺された奴か。あれは虫酸走る出来事だったな...そいつがどうした。

北野:ともだちぃ.........ゆいぃつのぉ.........かちぎぃ......しんじゃったぁ......おでのせいだぁ......

歌内:...?


歌内は必死に耳を傾けて経緯を知ろうとした。

 実は勝木は北野にとって唯一の悪友でもない友人で、勝木の純粋な心持ちに何度も助かっていた。

そして天然で()()()()な性格を利用して次の標的を探る為の伝書鳩として勝木を可愛がって利用した。

北野は勝木が動物好き、特に狸が好きなのは承知の上だった。

然し、それが気に食わず...かといい勝木を虐めるのは凄く嫌であった。

なのでその怒りを打付(ぶつ)ける為に仲間を呼んで人々や小動物を嬲っていた。

初めは揶揄(やゆ)する程度で(とど)めようとしていたがそれでも怒りは完全に解消出来なかった。

そして日に日に虐めは裂傷(れっしょう)が出来てしまう程の(えぐ)い方向へ走ってしまい、相手が(ちんば)に為る(まで)気が済まなくなった。

北野は内心歯止めが効かなくなった状態に対して切羽詰(せっぱつ)まっていた。

この侭虐めを続けていたら人を殺めてブタ箱に入れられると思った為だった。

けれど、此処までしないと快楽を得れないので自らの力では抑えられなかった。

だが、勝木と接する事で(わず)か乍ら癒されていた。

()の感情は(あたか)も魂が(こも)った縫い(ぐる)みに本来の幸福を分け与えられてる様な、話してるだけで眇眇(びょうびょう)たる頃に戻った───そんな気がしたのだった。

にも関わらず、ヒロトが化け狸と知って以降は勝木の事を忘れヒロトを甚振(いたぶ)って(ばか)りしてしまった。

そして勝木が狸好きであることを知らずに北野は勝木、大切な友人を失った。

 歌内は北野の赤裸々な話に対し言葉を失った。

今まで勝木を虐めなかったのは彼を(いと)しんでいた為だったというのを初めて知ったからだ。

歌内は(うずくま)っている北野を(しばら)くじっと見た後、胡座(あぐら)をかいて目線を合わせた。


歌内:お前、勝木を失って悲しいか?そうやろ、泣いてるし。俺も好きな事をお前に奪われた時と同じ気持ちだ、分かるか?数万円もする宝物を壊された、仔犬が車に轢かれて其の(まま)即死!親に意味もなく殴られ(ろく)に手当ても謝りもせずほったらかし!!これ等の感情はお前が勝木を救えられなかった時と同じだ!!!そしてお前は必ずこう言う。《あの頃に戻して。》俺もそうだ!!!!俺の気持ち、お前の悲しみ、これで分かってくれるよな!!!!!...なら、俺に提案がある“一緒に足を洗おう”。


歌内の心に籠った叫びの説教は教室中に響き渡った。

北野は.........馬手(めて)をロッカーに掛けて(おもむ)ろに立ち上がった。

北野は黙ってゆっくり(うなず)いた。

互いに(りん)とした表情で握手を交わし、罪を(つぐな)うと誓った。

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