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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
三章
14/50

~スクールライフ~ 3

 ヒロトは昼休みが始まり、生徒玄関に向かっていた。

ヒロトはこの時間になると無意識に走ってしまう、どんなに叱れても数日経てば(また)昼休みの時間に限って廊下を走ってしまう。

何故そこまでして生徒玄関に向かうのか、ただただブランコに乗りたい為だった。

さもないと直ぐに埋まってしまい楽しめなくなるからである。

ヒロトは手摺(てすり)を掴み急いで階段を下りた。

そして1階に到着し、後は玄関に向かうだけだった。

───ところが、誰かが落としたハンカチに気付かず踏んでしまい足を滑らせてしまった。

ヒロトは渾身(こんしん)を思いっきり廊下に打ち付けた。

あまりの痛さに一瞬身動きが出来なくなってしまった。


ヒロト:ぅ...イタイ...タスケテ...


と、大きな衝撃音を聞き付けた人々が次々と周囲に集まってきた。

ヒロトは手助けしてくれるとひと安心していた。

然し、誰一人手を貸すどころか(どよめ)きが起きた。


???:おい!どういうことだ?!

???:何でこんなところに...狸が!?

???:ぜってぇ森からやって来て来た奴やんけ。

???:寄生虫持ってたらどーすんだよ!

???:ひぃ、怖いこと言わないで!!

???:...先生、先生!!

???:お、落ち着け!落ち着け!だがか狸だぞ!


と、一人群衆してる所をかき分けて狸の所に来た者がいた。

そして狸の(うなじ)を掴んで持ち上げた。

狸に化けてしまったヒロトは必死に抵抗するも無力だった。


羽村:チョイと済まない、俺が何とかするから。


そう言って狸を掴んだ侭階段へ登った。

その最中、ヒロトは羽村に問い掛けた。


ヒロト:離せよ...何処に連れてく心算(つもり)なんだよ...

羽村:君が化け狸だというのは知ってる、何せその瞬間を見たの俺だけだから。

ヒロト:ハム【羽村晃一の渾名(あだな)】...何を言ってるんだ?

羽村:これから教室に行く、そして“あの人”に報告するんだ。

ヒロト:“あの人”...とは?

羽村:“北野(きたの)克行(かつゆき)”だ、奴は俺達を率いてるリーダーだ。礼津市の民俗学や民話に通していて物知りなんだ。只、読みすぎたせいでね...。


そう会話してる内に北野の居る5年1組の教室に着いた。

北野とは同じクラスで、一言で言えば情が熱い歴史博士っといったものだ。

引き戸を開けると、北野は窓際で喜早(きそう)エルフ作の『ある絵画』を読んでいた。

羽村は北野に声を掛けた後ヒロトを転がり捨てた。

ヒロトはそのまま転がって窓際の壁にぶつかった。


羽村:北野さん、面白い事に気付きました。

北野:なんだ、しょうもねぇもんじゃねぇよなぁ。ん?

ヒロト:イテテ...はっ?!

北野:コイツ、狸のくせに喋るな。てかその声...ヒロトだな?

羽村:そうだ、後藤ヒロトて奴は所謂(いわゆる)化け狸だ、私がこの目で確認できました。

北野:よぅ見付けたなハム、それにしても妙に弱々しいな...苛立つぞ。

羽村:放課後、歌内と村坂にもご報告します。

北野:お、そうしてくれ。後ヒロト、この事は絶対に(つぐ)むように。破ったら分かるよな?


こうしてヒロトは地獄の様な日々が始まった。

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