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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
二章
10/50

~出会い~ 4

 翌日、マツが目を覚めると自分が台所で寝てたことに気付き慌てた。


琴華:おや、起きたみたいだな。

マツ:...うん。

琴華:少し、話があるからこっちに来て。


マツは目を擦り、ダイニングテーブルのチェアに座った。

琴華は真剣な顔をして話した。


琴華:実は昨日言おうと思って、すごく悩んだんだよ。

マツ:何の事だ?さっさと話した方が心が和らぐぞ。

琴華:...分かった、単刀直入に言おう。一緒に籍を入れよう、つまり私の婚約者になって欲しいっということ。

マツ:...!?...ど、どうゆうこと...なの!?

琴華:私、マッ君に惚れてしまったの、ずっと守っていきたいって。

マツ:あ、あぁ。

琴華:それに君はどれぐらい野宿したが分からないけど、このままじゃ可哀想だと思ってさ...。近いうちに婚姻届を届ける予定なの。


琴華は化け狸であるマツと結婚することで好きな人とずっと居られるのと同時に、襤褸雑巾(ぼろぞうきん)になっていたあの時のマツを見て守らなくてはいけないと決意して踏み切ったのだった。

琴華はマツの名前を考えていた、このままじゃ古典的で当てる漢字がどうも思い付かない。どうしよう...と内心悩んでいた。


『マツ』...

『末』...

『待つ』...

『松』...

「木」『公』...

『木』『ハム』...

「木」『公』...

『公』『木』...

...!!


琴華:ねぇ、今日から君の名前...『公木(こうき)』にしない?ほら、結婚する時さ...違和感のないようにさ!

公木:...どう書くの?

琴華:そうね、『公園』の『コウ』に...植物の『キ』って漢字。紙に書くよ。


琴華はレシートの裏に書いた。

漢字自体単純で覚えやすい、その為寸なり受け入れた。

以降、自分の事を“マツ”とは言わず“公木”と名乗ることにした。

公木は新たな名前を付けられたことで過去に引き摺ることなく済み、寧ろ光栄だった。


公木:成る程...俺、漢字書くの苦手なんだ。その、平仮名さえも怪しいところだからさ、えっと...“ハ”...“ム”...“ホ”...んで、後藤の字は...“ノ”...“イ”...“ト”...“ム”...“ノ”...“ヌ”...───“サ”......“ク”...“ニ”...“ソ”...“ニ”...“ト”...“ン”......“ケ?”...これでいいか?

琴華:うーむ、...初めてにしては上手い...かな?まぁ書類に関しては私に任せておいて!

公木:お、おぅ。

琴華:そう言えば、ドリルという平仮名とか漢字とかを覚えるのに役立つ、所謂(いわゆる)練習するための本があるんだよ。

公木:成る程、それは便利だな。よし早速やってみるか。


 公木は琴華の為に文字と多種多様な言葉をドリルや問題集で学び、金銭を得るために清掃会社に勤めた。

そして琴華は婚姻(こんいん)の書類を(まと)めて、家事を習得して...将来の事を考えていた。

3年後、琴華の両親に面会し決意を互いに決め、公木と琴華は無事結婚式を挙げた。

その後、赤ん坊が次々と生まれて幸せに恵まれた。

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