表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕、蚊を操ることは出来るんですがいかがでしょう?  作者: 視水 蚊糸(しみずかいと)
1/1

第1話 My friend, Mosquito.


ぷーーーーーーん

ぷすっ

ちゅーちゅー




「詠唱:モスキートスカッタード。」




その少年の声をなぞるように


蚊はフラフラと離れて行った。




僕の名前はカイン。


魔法使いだ。


この世界では生まれつき


各々に固有の魔法能力が備わっている。


炎を自在に操る者、


仲間を治癒できる者、


体を岩のように硬化させる者…



その中で僕が授かった能力は


「蚊を操る」ことだ。



詳しく言うと、蚊は生存本能で血を求めて人を刺す。


その対象を水や食べ物に書き換えることで標的をずらしたり


生存本能自体を変化させる(恐怖や喜び、悲しみなどの感情を一時的に持たせる)ことで


状況に応じて正確に操ることが出来る。



(蚊がカインの目の前を通り過ぎてゆく)



ご覧の通り、凄まじく弱く思えるこの能力には


追い討ちをかけるようにさらに悲しい事実がある。



それは、蚊は手でパチンっと


意図も簡単に潰されてしまうという事だ。


なんてことだろう…


1人1つしかない魔法能力なのに…


「なんて僕はついてないんだあああああ!!!」


(蚊がカインを嘲笑うかのように飛び回っている)


生まれつきの能力を嘆いても仕方がない。


家の手伝いでもしに戻るか…




この町はとても広く


様々な家や店が立ち並んでいる。



この少し小さな建物が僕の家だ。


「母さん、ただい…」



キャァーーーーーー!!!



!?



悲鳴の元に駆けつけると、幼馴染のマリスの家に大きな穴が空いていた



「大丈夫かっ!?」


家に入ると、黒い服に身を包んだみすぼらしい男がマリスを人質に取っている。


「お、おい…!マリスを離せ!!」


「へっへっへ…誰だお前はぁ?」


「そいつの幼馴染だ」


「ああそうだったな!俺はこいつの父親に家を奪われたんだ。その恨みを、晴らさでいられるか!!」


「あ、あなたは町神に献貢を半年もしなかったのです…自治会ではそういう決まりだったと聞いてますよ…!」


そうだ、こいつはこの町で有名な献貢滞納者だ。


「うるせえ!!その口、二度と聞けないようにしてやる!」


「やめろ、マリスは関係ないだろ!」


「ふんっ。俺は触れたものを内部から発熱させ、そのまま蒸発させてしまえるんだ。この娘も消し去ってやるわ!」


まずい…


このままだとマリスが死んでしまう…


考えろ…考えるんだ…



「おーい、カイン!何があったんだ!?」


あれは…これまた幼馴染のリュースだ!


「リュース!10秒後にあいつに魔法で攻撃してくれ!」


リュースは何かを察したようだが


「え!?で、でも、俺の能力じゃ、あいつには効かないのは知ってるだろ!?」


「いいから早く!!」


リュースの能力は空気中の水蒸気を凝縮させ


出来た水塊を自由に操ることが出来るのだが


それをこの悪党に銃のように放った所で


発熱能力ですぐにまた水蒸気に変えられてしまう…



しかし


僕の能力と組み合わせれば…!



「わ、わかった、10秒後だな!?」



この10秒で僕に出来ることは…


10...9...


「詠唱: …」


8...7...


「モスキート…」



「へっへっへ!馬鹿か!?そんなモタモタしてっと


この娘が溶け消えてしまうぞ…?」


マリスの体がみるみる赤くなってゆく…



6...5...


「サースティ」


この家に蚊は1匹…


獲物の対象を血にすることは出来ても


人を選ぶ事は出来ない!!


それでもカインには勝算があった


4...3...


「カイ…ン…もう…だめ…」


「ひーっひっひっひっ!おしまいだあ!」


2...1...



すると


「(ん…?あ、足が痒い…!!いま手を離すと発熱魔法が解除されちまうが…それにしても痒い!!一瞬足を掻くだけなら娘の体内の熱を逃がさずに済むだろう…)」


黒服の男の意識が足元に集中し


足に手を伸ばしかけた


「(リュース!今だ!!)」


カインがリュースの目を見て合図を送った瞬間!



「詠唱:アクアイーグル!!」


瞬く間に鳥の形をした水塊が出来上がり


凄まじいスピードで男の顔面目掛けて発射された


痒さに気を取られていた男は能力を使う隙を与えられず


見事、顔面にクリーンヒット



水は勢いよく何かに衝突すると、その圧縮により


瞬間的にコンクリートのような硬さを生み出すのだ



捕まっていたマリスは男の腕の緩みと共に


こちらに走り寄ってきた


「大丈夫か、マリス!?」


「なんとか…」


「おい、あの男は!?」


黒服の男は気絶しているようだ…


「ありがとう、カイン」


「無事でなによりだ」


(その1匹の蚊は満足気にこの場を去っていった)


「でもよ、カイン。お前は蚊を操れても


あの男を狙うことは出来ないんだろ?


もし俺やお前を狙ってたらどうしたんだ?」


「確信はあったよ。蚊は温度が高い方へ引き寄せられる。


そして黒い物に纏わりつく習性があるんだ。


だからあの1匹の蚊は必ずあの男に吸い付く…



普段から蚊と戯れてる僕を甘く見ないで欲しいな」


無邪気な笑みを見せてみる…




後々、男は後から駆けつけた大人たちが捕まえ


牢屋に入れられることとなった。



「お前たち、無事で何よりじゃわい」


「おじい様、心配をかけてしまい、申し訳ございません」


「いやいや、マリス、お主が悪いのではないぞ」


「そうだぜ、お前が無事だった事が1番だ!


な、カイン?」


「う、うん…


でもさ、マリスは目を見るだけで人を停止させられるんだろ?


どうしてその魔法を使わなかったんだよ」


彼女は少し俯いたまま、悲しげな笑みを浮かべた…

YouTubeもやってます。

良かったら覗きに来てください^^

「しみずクン」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ