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炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
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9、どこだ!どこにいる?!

挿絵(By みてみん)


いやそれどころか、私はほとんど自室から出ることすら覚束ない状態になってしまっていたのだ。そう、私はいわゆる「引き篭もり」というヤツになっていた。

私と社会をつなぐ唯一の接点は、案の定ネットだけ、という状態となった。そしてネガティブな思考のときには得てしてネガティブな情報ばかりに耳目が偏りがちだ。

そんな私が特に自ら追い求めたのが、児童虐待のニュースだった。

親が子供を殺害する。

若い実母が、我が子を虐待する夫たる養父に気を使い、それを見て見ぬふりをする。あるいはそれに加担する母親までも存在する。

目をそむけたくなるような出来事だ。

だが当時の私は、そこから目を離すことが出来ないばかりか、さらなる深度の情報がないかと、昼夜を問わずネットの中にそれを求め続けた。

いったいどんな心情だったのか?

今振り返って見ても、いや当時でさえも、自分にはよくわからなかった。

ただ、ありのままの事実を言うならば、私はかつて幼き日に、実の父の暴力に打ちのめされ、両親の離婚により辛うじてその難局を乗り越えた、という過去があった。


「どこだ! どこにいる?! 出てこい!!」


まだ私が小学校に上がる前のこと。

酒を飲んでは母を殴り、暴れる父を恐れて私はいつも押し入れの中にその身を隠した。


「ここにいるのはわかっているんだぞ!」


強い殺意を感じた。

父が私に向ける殺意。と同様に、あるいはさらに強い殺意を幼き日の私も父に向けていた。

だがある日。何の前触れもなく恐怖の日々に永遠の終止符が打たれた。

借金苦の末、実父はどこへともなく不意に一人蒸発したのだ。

母とともに、しばし私は安堵したのを覚えている。

だが現実は全く甘くはない。いや、というよりは実感としての現実というやつは、私に対して常に冷たかった。

暴力に怯えることはなくなっても、カネの悩みは尽きない。子供にだってそんなことはよくわかる。母との新たな苦労の日々が即日幕を開けたのだ。

だから私は強く強くカネを欲した。

カネがあれば、おカネさえあれば、きっと幸せになれる。

子供だった私は、極めてシンプルに強くそう信じていた。


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