表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
54/62

54、間違っていた自画像

そうか……俺は長いこと、自分に対して、えらく思い違いをしていたんだな……。


私は知っていた。この秘書が決して嘘など付けないことを。それどころかオベンチャラもいわなければ、ご機嫌取りも絶対することはない。

ときにジョークを飛ばしたり、ウィットに富んだ会話を機能的には出来るものの、私は秘書仕様に必要のないものとして、その設定を利用開始時点で既に排除していた。

だから彼女が下した私への人物像は、間違いなく100%正しい。


俺は、ずっと思いこんでいたんだ……自分はそういう人間だって……。


ふと少年期の自分を思い起こす。

暗く辛かった日々。暴力と、貧困に耐え、環境の変化に苦悩し、やがて私は、あの運命の日の、あの夜を迎えた。


俺は……たしかに……。


私は思い出す。

あの頃の心情を。その思考を。


確かに俺はあのとき……いや、あの頃ずっと思っていた……


自由になりたい。こんな生活から抜け出したい。その為にはまずもって、何よりもカネが必要だ、と。そして、カネが多ければ多いほど、きっとより自由に生きられる。誰にも指図されず、誰にも支配されることなく、誰にも振り回されることなく、自由に生きられるはずだ、と。

とはいえ、支配者階層に君臨することを夢想したわけではない。私が望んだのは、ごく普通の、暖かくて、笑ったり、泣いたり、ともに感じ、ともに思い出を共有する、そんな家族を、そんな家庭を築きたい、手に入れたいと思っただけだ。

最愛のパートナーとの幸福に満ちた空間、時間を過ごし育むことを、私はただ望んだだけだ。

そして私は、あの“運命の日”以来、そこに向かって真っすぐ歩んできただけなのだ。


それに俺は……俺のすぐ傍にいる、周りにいる人たちの役に立ちたいと……頑張って来た。俺が望み、俺がやって来たことといえば、ただそれだけのことだ。


そう。私は今日まで、自分の理想を手に入れるため、何をすべきかを考えた。口下手で内気な自分だけど、そんな自分にできることは、いったい何のか。

やがてその過程で私は気付いたのだ。私は誰かの役に立つことをするたびに、自らが幸福を感じるということに。

だから私はそうした職業を選んだ。そしてそれに没頭してきた。そんな生活に、仕事に、私は夢中になっているうちに、気が付けば私は手に入れたかったものの多くを、既にこの手に掴んでいたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ