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炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
53/62

53、事ここに至った理由

「……いや、この状況。……何とか、ならないものかな」


「増税に関することでしょうか?」


「うん。そう……そうだな。それも無論関係しているが。

世界は、このままではいけない、と思ってね」


事がここに至るまでの理由はいくつもある。

重なる巨大な厄災。だが政治家や官僚は、“政府の巨大な債務”を盾に、しかるべき生活給付や復興に掛けるべき適切な規模の予算を拒んだ。

さらに如何なる巡り合わせなのか、時を同じくして、世界は大国同士による生き残りと覇権を掛けて争う混沌の時代を迎えた。そしてその結果として、地上に存在するすべての国々が、武器を取らざるを得ない状況に陥ったのだ。


「しかし……不思議だな」


「如何されましたか、社長」


「ああ……なにね。私のような口下手で人付き合いのヘタな人間が……どうして今の地位を得ることが出来たのかな?と、ふと思ってね」


だが私は知っていた。皮肉なことに、そうした世界の状況が私に巨大な富と地位と名声をもたらすこととなったのだ。無論、私自身は全くと言っていいほど、それを意図したわけではないのだが。


―――まるで、自分の幸福と引き換えに、世界は滅亡に向かってまっすぐ進んでいるようだ。


心の中で、漠然とではあるが、私はそんなことを思わずにはいられなかった。まさに私の人生と世界の状況は、交わることのない反比例の曲線を示していたからだ。


「社長。ご冗談を。社長が口下手で、人付き合いが下手だなんて!」


画面の中の美人秘書が、不意にけらけらと声を上げて笑い出した。そして彼女はかつてないほどの生き生きとした表情を見せ、かつ饒舌になった。


「私が社長の秘書になって、もう7年と65日になりました。私には、これまで社長と歩んできた、あらゆるビジネスシーンにおけるデータが蓄積されています。それにプラスして、私が秘書になる前のデータも引き継いでおります。

社長。あなたは私が知る限り、そしてこうしてお仕事をご一緒させて頂くようになる前からずっと、人付き合いが良く、お話上手でありながら聞き上手であり、如何なる相手にも思いやりを示し、交渉ごとに秀で、さらには快活な、とてもコミュニケーション能力の高い優秀なビジネスパーソンでいらっしゃいますよ」


「えっ?」


私は呆気にとられた。コンピューター仕掛けの秘書の新たな一面を、不意に目にしたのがその理由ではない。私は、有能な上にこれ以上ないほど実直な秘書が、私自身が抱く自画像とはまるでかけ離れた人物評を私に対して寄せたことに、心底驚いたのだ。


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