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炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
51/62

51、彼女の判断

「サン・ディエゴからの中継はあるのかな?」


「はい。ただいまお繋ぎします」


そう告げた秘書の姿が消え、透過スクリーンは即座にニュース画面に切り替わった。だが、サン・ディエゴからの中継はまだ始まっていないようで、画面には国内ニュースが映し出されていた。

アナウンサーが伝える。


「この週末もさらなる増税に反対する大規模集会が全国各地で行われております」


同時に、怒りに満ちた人々の表情がスクリーンに映し出された。彼らが手にするプラカードには「さらなる増税反対!」「これ以上国民生活を破壊するな!」「25%超えなど狂気の沙汰」などの血の叫びがそれぞれ記されていた。


「サン・ディエゴからの中継はまだかな?」


私はこれまで、自分のビジネスに必要不可欠な情報やニュース以外は、極力避けるよう、ずっと心掛けてきた。とりわけ巨大メディアは、当然の如く大きな事件や、不祥事などの暗い世相、インパクトの強い凄惨な事故などを多く取り上げ、それらを強調したり、誇張することが多い。いや、そればかりか、恐怖心をあおるよう情報を改ざんすることさえもままある。

だから私はこれらを可能な限り忌避し続けてきた。

その理由は明確だ。そうしたネガティブな情報が精神や思考にもたらすであろう悪影響を回避したかったからだ。

とはいえ、無論それらの事象を全て無視し、耳目からシャットアウトしているわけではない。あくまで私が避けているのはメディアを通して加工された二次情報である。

私はその立場上からも、多くの一次情報を得るだけのツールとコネクションがあったし、そもそも不要な情報といえど、取捨選択する前からそれらを遠ざけることは論理的に不可能である。

だからその結果、如何なる相手とも、例えば酒席などで会話が困らない程度以上の「時事ネタ」には、幸か不幸か通暁していた。

しかしである。出来得ることなら、それら一切のネガティブな情報を初手から遠ざけておきたたいというのが本音である。


そして、そんな私のモットーを、有能な私のAI秘書は十二分に把握していた。だから、こうしたニュースをメディアを通して私が視聴するような事態は、彼女はこれまで殆ど完璧に避けてきていた。

しかしながら同時に、これからサン・ディエゴの施政下に置かれた全地域を統括する最高権力機関による"重大発表"が、私と私に関わる全てのビジネス・パーソンにとって、どれほど大きな影響があるのか、ということに関しても彼女は完全に理解していたのだ。

そしてこの優秀な秘書は、私の行動原理に反してでも優先すべきを選択したのである。


「申し訳ございません」


「いや、会見の開始まで、このままでいい。そう大した時間はかからないだろう」


「了解いたしました」


そして私はそんな彼女の判断を尊重した。


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