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炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
31/62

31、照らす

『初めであり、終わりである』


ふと私は今置かれている状況から、自分の注意が離れていたことを自覚した。遠くで迷走していたいくつものサイレン音が収斂され、再び、そして確実にこちらに向かって来ていることに気付いたのだ。

私は左右に目をやった。出入口らしきものは見当たらない。もとより、逃げるのなら今来た道を引き返す方がよりベターであろう。

そう思い、振り返ろうとした瞬間だった。

前方にある十字架が、そしてステンドガラスで描かれた宗教画が、さらに「Α」と「Ω」と記された二つの文字が、先ほどまでより明かにはっきりと目に見えていることに気付いた。

だけではない。それらに自分の影が大きく重なり、揺らめいているのを私はしっかりと知覚したのだ。

全身に緊張が走る。私は手にしたままのナイフの柄を、さらに力を込めて握りしめた。

そして私は思い切って振り返った。

その刹那、目線の先からゴォっと小さく音が鳴ったように感じた。

それは炎が風に吹かれて揺らめく音だった。


「……だ、誰だ!」


私はそう叫んだ――つもりであったが、体が力んでいたせいか、思ったように声が出なかった。

いや、そうではない。そこに目にしたものを、私は心胆から畏怖したからだ。

本能的に感じた恐怖の正体。

そこにいたのは松明を持った一人の若い男だ。

表情は――ない。焦点があっているのか、否かもわからない瞳がこちらに向けられている。

その男は極めて泰然とした様子で既に教会の中に立っていた。


なぜ?

いつの間に?


音もなく、気が付けばその男は距離にして僅か5~6メートル程度のところに立っていたことが、どうしても解せない。

身に着けているのはフードが付いた膝まである重そうな黒っぽいコートだ。そして右手には燃え盛る松明。炎は煌々と輝き、男を、教会内全体を、そして私自身を照らしていた。


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