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炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
19/62

19、強い情動が頭をもたげる

ただ私は不思議と冷静なままだった。実を言うと、こうした場面を迎えたことは、それまで一度もなかった。

いわゆるカツアゲだ。どうしたものか。殺すか。

唐突に強い情動が私の中に沸き上がった。私は身震いした。全身に力が入る。とりわけそれまでだらりと垂らしていた右手が硬くなった。

その刹那、相手が一瞬怯んだのを感じた。愚かなことだ。相手はその段になって、ようやく私が右手にナイフを手にしていることに気が付いたのだ。


「……あっ」


声を出したのはその少年だ。

私は固く結んでいた右の拳を上に強く突き上げた。親指の付け根が、相手の肋骨を強打した。と同時にその手にしていた然して大きくないその凶器は、いとも容易くその根元に至るまで相手の左胸奥深くに突き刺さった。

私より幾分背が高く、私を見下ろすようにしていた少年の顔が少し下り、いよいよ目の前に迫って来た。そしてそのまま、さらに下へとずるずると崩れ落ちて行った。


「……ぐぁあああっ」


必死に呼吸をしようとしたのだろうが、それは恐怖に満ちた絶叫にしか聞こえなかった。少年は私から手を離し、その場にしゃがみ込むような姿勢になった。その様子に、後方にいた3人の少年たちが怯んだ。私にはそれがよくわかった。

私も体が震えて仕方がなかった。息も荒くなる。だが怒りも恐れも感じない。これが武者震いというやつか。私の心は依然として極めて静かなままだった。

私にナイフを突き刺された少年は座ったままよろめき、私の方に(こうべ)を垂れてきそうな姿勢になった。私は咄嗟に半身を引いた。


近付くな!


強い情動が再び頭をもたげた。

私は引いた右足に力を籠め、その少年の左側頭部めがけて思い切り蹴りぬいた。

ゴォン!という頭蓋が破壊されるような鈍い音が響いた。そしてその刹那、相手は先程まで私が寄りかかっていた金網のフェンスに頭から突っ込んだ。

しばらくの間………とはいえ実際にはほんの数秒であろうが、私はもはや微動だにしないままその場に転がっている相手の姿を凝視し続けていた。


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