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炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
17/62

17、特別でない、ありふれた存在にすぎない自分

さらに私はふと、その右手には、これまで後生大事に保管してきた件のバーベキューナイフが握られたままであったことに気付く。ため息交じりに、私はそれをしばしの間じっと見つめた。そうしているうちに私は、一層惨めな気持ちになって行くのを強く自覚した。


「ああ……所詮、俺はガキなんだ」


自由を渇望しているようで、その実、自立する為の能力は無論のこと、本当はその気概すら持ち合わせていない。本心では親の庇護のもと、ただ甘やかされて、ぬるい生活を送りたい。所詮それだけのことなのだ。

親の愛、取り分け父親の愛が過不足な幼少期を過ごしてきたのだ。だからそうした感情を持つのは仕方のない、あるいは当然のことだ。

他人に対しては、冷静にそう分析することが出来たかもしれない。

だが自分は何かそうした定型には収まらない、曰く説明しがたい特別な存在であり、その懊悩もまた類例のない特殊なものであるはずだと、ある意味で私は、私自身を過大に評価していたことを、このとき無意識に悟ったのだった。


井の中の蛙大海を知らず


このとき私は、私が不幸であること以上に、決して特別な存在などではなく、どこにでもいるような他愛のない、ごくありふれた存在に過ぎないことを自覚して深く傷ついた。

ごく普通の幸福すら手に入れられない特別な存在。

無自覚にそう捉えていた奇妙な選民思想に毒された自画像はただの妄想であり、実のところごく普通の幸福を望むごく平凡な、その他大勢の一人に過ぎない存在であるという「事実」を、私は受け入れざるを得ない心境にこのとき陥ったのである。

唐突に「惨めな私」は、そのナイフを川に投げ捨てたい衝動に駆られた。そしてそのまま私はどこかに消え去りたい、と不意に強く思った。私はこれまで自分に与えていた「自己愛」をこのとき急激にほとんど失いかけてしまったのだ。


「よぉー。ちょっといいかなぁ」


と、その時だった。

私が金網に左手をかけ少し身を乗り出し、右手に掴んでいたナイフを河川に向かって投げ捨てるか否かを躊躇していたとき、不意に何者かがどこからともなくそう声を掛けてきたのだ。

思わずその声がする方に目をやれば、10メートルほど離れたところに、3~4名の人影が見えた。


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