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炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
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12、運命の土曜日

「俺が俺を守る。俺が俺を大切にする。俺だけが俺を……」


ある日、部屋の片隅で一人机に向かいその身を縮こませいた私は、うわ言のようにそんな言葉を発している自分にふと気が付いた。


「そうだ。俺は……俺だけは……誰も愛してくれないなら、せめて俺だけは俺を、愛するんだ」


そして私は、「人生が一変した」あの”運命の土曜日”を迎えた。

その日が訪れたのは、自室に引きこもっておよそ一か月が過ぎたころであった。

私の部屋は、義父の持ち物である戸建て住宅の二階にあった。幸か不幸か、元々がいわゆる二世帯住宅として建てられたこの家は、屋内の階段を登りきった少し向こうに扉があり、そのカギを掛けてしまうと、風呂もトイレも含めた二階全てが、そっくり同様の機能を備えた一階部分と完全に分離する構造になっていた。

つまり、引き篭もるには極めて都合の良い造りとなっていたのだ。

引き篭もりを決意し、扉に鍵をかけた瞬間、私は妙な心の高まりを一瞬だけであったが感じたの今も覚えている。

とはいえ、私が学校に行かなくなったばかりか、階下にすら顔を出そうともしなくなると、当然のように母と義父が代わる代わる、あるいはともに、食事を運んで来てくれる際に、あるいは他用がなくとも、私の二階にやってきては、なにがしかの声を掛けてきた。

だが私は一切応えなかった。

初めて取った、こうした私のあからさまな反抗的な態度を受けて、義父と母が動揺しているのは、扉越しにも十分伝わって来た。しかし私はもう、誰かの顔色を窺って、自分を押し殺し、相手が期待する受け答えや振る舞いをするだけの気力を完全に失っていた。

しかしながら、心身がそんな状態に陥っていた私であったが、二人が必死に自分のことを思ってくれているのをかすかに感じることはできた。

いや、それは嘘だ。

部屋に引きこもって数日が立つと、それらはただの雑音以上の意味を、私の中ではもう一切なさなくなっていた。

初めのうちは、多少なりとも感じ取ることが出来た両親の心の動きも、あっという間に全く気にならなくなっていった。

無痛だ。何も感じない。だから当然、幸福でもない。

だが自分以外の何者かに振り回されないという生き方は、とても新鮮に感じられた。

とはいえ、そんな僅かな心のときめきはすぐに大いなる不安に取って代わられた。

部屋から出たくないという渇望は満たされたものの、一週間も経った頃には、部屋から出られない、という恐怖へと心情が変化した。


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