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炎罪のウロボロス  作者: あくえりあす
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10、母の再婚と「幸福」ではない新しい生活

そして数年後、私が小学3年生になったころ、私の願いはその一部が叶った。

母が再婚したのだ。

こうして、義父と実母、そして私の三人での生活が始まった。

義父は幸いにも暴力で他者を支配したがるタイプでもなかったし、額の多寡は別として、給料を毎月規則正しく会社から振り込んでもらうだけの能力を有していた。

少なくとも私達母子は、義父のおかげで最悪の生活状態から脱することが出来たのは間違いなかった。

だから私は義父には心底感謝した。本来なら誰に言われるでもなく、そう思うはずだし、そう思うべきでもあった。幼いながらに、当時の私は自分自身に何度もそう言い聞かせた。

だが頭ではそう理解できても、心が付いて行かなかった。

義父は極めて実直な人間であった。自分を律し、そして他人にも同様に規律を求めた。

そう。養父は至極厳格な性格の持ち主であったのだ。

物心がつく前から荒れた生活しか知らなかった私には、そのような義父の振る舞いや教えは、人生における格好の手本となるはずであった。

だが、ただの言い訳になるが、当時の私にとっては義父の余りに隙の無いそうした言行は「良薬」ではなく「劇薬」であったのだ。

しかも義父は自らの生き方に対する信念をだれよりも信奉していた。そしてその信念を、良心に基づいて、あるいは父親の責務として、ありとあらゆる場面で私に強要してきたのだ。

勿論私も、その意に応えようと努力した。

素直な気持ちで、義父の意に沿いたいという思いもあった。だがそれ以上に私は「恐れていた」ことがあった。それは、まともな生活を提供し続けてくれる「偉大な義父」に少しでも抵抗すれば、母親の機嫌が著しく損なわれる、という事態を招来することだった。

事実、私が何か義父の不興を買うような行動を無意識なうちに犯してしまった度に、当の義父よりも遥かに強い調子で母は私を叱責したのだ。

それは、とてもとても悲しく恐ろしいことだった。

なぜならば、その結果この全宇宙において、唯一の味方であったはずの母親の加護を私は失い、自分が孤立無援の存在なんだということを、強く自覚する羽目になるからであった。

それが故か、絶えず誰かの目を気にしながら生きるようになっていた私は、非常に残念なことに、気が付けばそうした生活がまったくもって「幸福」ではないと感じるようになってしまっていたのだ。


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