10-9:お膳立て
夕食を食べ終えて、俺たちは改めて今後の方針について話し合う事にした。
方針と言っても、俺たちの今後と言うよりは如何にして第十階層に冒険者を到達させるかだ。
「まず、第十階層は途中の部屋のモンスターを、私たちで毎日倒すしかないんじゃないかな?」
「俺たちみたいなのじゃないと、あの総戦力を難なく倒せるまでに強くなるのは難しいだろうしな」
「だから、そこを何とかするだけでも随分と到達し易くなるし、あそこを余裕で突破できる冒険者パーティがやってきたら、私たち危ないかも」
「あー、確かにそれはあるな」
俺たちは強くなったと言っても、所詮は地道な努力に偶然が重なっただけ。
他の奴らが別の形で俺たちに匹敵する力を手に入れる可能性は十二分にあるし、相手にするのは危険だ。
それに、勇者とかいう不穏な存在も世界には何人もいるわけだしな。
「願うなら、適度に強いけど俺たちよりかは弱い奴って事か」
「本当なら、低階層を探索している適当な冒険者を脅して押し付けたいんだけどね」
「それをやったら、いよいよ本当に俺たちは人殺しの指名手配犯だ。それは最後の手段にして、できる事なら穏便に済ませたい」
「うーん、ダンジョンのモンスターと同格に堕ちちゃうのは嫌かも」
できれば正当に腕輪──アミュレットを取り返しにした哀れな冒険者に押し付けたいんだよなあ。
町長の罠である事を知らない事には同情するが、まあ自業自得だ負い目も無い。
「それから、第九階層は正解の通路に目印を付ければいいんじゃないかな? あそこは先に進む方法が分からなくて攻略が遅くなっちゃうし」
「正解さえ分かれば楽勝だったからな、あそこ」
「楽勝って言っても第九階層のモンスターを倒せなきゃいけないし、最低でもそれくらいの強さの冒険者パーティが来てくれないと」
それくらいの強さは必要か。
道中は勿論の事、腕輪を押し付けた後早々に死なれても困るしな。
「でも、その条件だと現時点で一番近いのが……」
「ジースたちか」
やはりと言うか必然的と言うか……ここで因縁の対決になりそうだな。
「ああ、そうだ。ガトーレ」
「えっ、何? ブラン?」
俺はガトーレの腕から腕輪を奪い取る。
というか奪い取る感じで腕輪に触ると、俺の左腕に腕輪が移った。
「ビックリした! もうっ、言ってよ!」
「ごめんごめん、ついでに俺の姿も男に戻してくれ。そうでないとラスボスとして何か締まらない」
「わかったわかった。魔法をかけてあげるから、ちょっと待ってて」
やれやれ、ようやく元の姿に戻れる。
今話し合った計画が上手く行き、できる事なら早々に二人揃ってダンジョンを脱出したい。
そう思った夜だ。




