10-3:ベッドは一つ
夕食も食べ終え、部屋も一通り見終え、他にやる事もない。
今夜はもう寝てしまおうかと思ったが、大きなベッドが一つしかないのか。
仕方ない、その辺にあるものを集めれば寝床の一つくらいは作れるだろ。
「ベッドはガトーレが使えよ、俺は床で寝るし」
「うーん、でもそれじゃあブランの疲れが取れないだろうし」
「じゃあ、どうしろって言うんだよ?」
「一緒に寝ればいいじゃん」
随分大胆な事を言う様になったなあ。
確かに、このベッドは大きいから二人くらい余裕で寝られそうだが、うーん。
「いいのか?」
「だって、仕方ないし。それに、今のブランは女の姿だから」
「お、おお……」
「この姿なら変な事もできないだろうし」
ああ、そうだったな。
女同士なら何も起こらないってか!?
いっそ油断しきっているガトーレに何かしてやろうかと思ったが、そんな気分にはなれないので止めた。
結局、俺とガトーレは同じベッドで一緒に寝る事になった。
ベッド自体のサイズが大きいので密着するなんて事はないが、それでも二人の距離が近くで何だか落ち着かない。
「この部屋が中にモンスターが入れない仕組みになっていてよかった。じゃないと、野営みたいに交替で見張らないといけないし」
「今まであまり気にした事なかったが、そうなのか?」
「ダンジョンの外にモンスターが出てこないのと同じ仕組みかなあ?」
「へえー、普段から身近にあるものなんだな。確かにそういうのが無いと街とか築けないか」
常時気を張る必要がなく休めるってのはいいが、そのおかげで今の状況か。
微かに漂う女の子特有のいい匂いのせいで、余計に気持ちがざわつく。
「明日にでも材料揃えてもう一つベッドを作らなくちゃな」
「町長に『小さいのでいいからもう一つベッドを寄越せ』って要求したら?」
「いや、どうやって?」
「魔法のメモ紙に要望を書いて、空の食器と一緒に置いておけばいいじゃん」
その手があったか。
というか、魔法のメモ紙がこの部屋に置いてあった理由って、本来こうやって外と連絡するためかもな。
「────スー、スー」
寝付くの早いな。
まあいい、俺も明日に備えて早く寝よう。




