11-8:理不尽に落とされる日もあれば上手く行く日だってある
俺たちは、町長の館を出たその足で銀行に向かった。
「そんなに早く行って大丈夫なのか? 指名手配が解除されるのにも多少なりとも時間がかかるだろうに」
「大丈夫、他の商店と違って銀行にはいち早く連絡入れてくれるだろうし」
「そうなのか?」
少なくとも、街中を歩いている現時点で襲われる事はない。
しかし、周りの人間が警戒していたり、ヒソヒソと話しているのは伝わって来る。
こんなんで大丈夫か?
銀行に到着したので早速受付に向かったが──
「ひいぃ! 店長! 店長ぉー!」
「やっぱり……」
「あれ、おかしいな?」
銀行が慌ただしい空気になってしまった中、奥から店長らしき人間が現れて一喝する。
「この人たちは大丈夫です、安心なさい! オホン、大変失礼致しました。町長から先ほど連絡がありまして、話はすべて通っております。こちらがブラン様の、そしてこちらがガトーレ様の預金全額で御座います」
「話が早くて助かる。どれどれ……」
俺とガトーレは金貨等が入った袋を受け取り、中身を確認した。
「よかった、確かに全額だ」
「長らくのご利用ありがとうございました。どうぞ、これ以上はお引き取りくださいませ」
貯金を下ろした俺たちは一ヶ月ぶりの宿へと足を運んだ。
本当は今すぐにでもこの街を出たかったが、今日は時間的にもう遅い。
この街での最後の一夜を宿で過ごす事にした。
「あ、あんたたち戻ってきたのかい!?」
「おちついて、オカミさん。私たちの指名手配は解除されたから」
「えっ、そうなの!?」
情報がまだ行き渡っていないからな、驚くのも困惑するのも無理はない。
「それで、急だけど明日この街を出るから、今夜だけ泊めて」
「前払いで貰った料金がまだ残っているから部屋は空いているよ。出ていくなら、明日の朝に残りの分を清算……」
「ううん、それは取っておいて。今までお世話になった分のお礼って事で」
「いいのかい? そういう事ならありがたく頂いておくよ」
「いいの。それに明日私たち早いから、鍵だけ置いてそのまま出ちゃうし、今までありがとう」
こうして俺たちは久々にいつもの宿で最後の一泊をした。
早朝、宿を出た俺たちは朝市にて食料の買い出しを急いで行う。
そして、俺ブランと相棒のガトーレは、ようやく街を出る馬車に乗る事ができた。
「この街ともオサラバか」
「結局、勇者くんから例の情報を聞き出せなかったけどいいの?」
「良くはないが、旅をすればそういう情報も入ってくると踏んでる」
「でも、行く当てとかあるの?」
当てなどない。
しかし、心当たりならある。
「ダンジョンがある他の街を回ろうかと思う。結局、そういう場所でなければ人も情報も集まらないし、手がかりに出会える確率も上がるかなと」
「うん、それがいいかも。何処かに定住なんてのは、今回のダンジョン内生活で性に合わないって分かったし」
こうして、俺たちはダンジョン探索改めダンジョン街巡りを行う事となる。
だが、それはまた別のお話で。