11-7:町長だって怖いものは怖い
ダンジョン入口の門番をやっていた衛兵に案内され、俺たちは町長の館へと通された。
そして、給仕の人間の案内で町長が仕事をしている執務室に案内される。
すんなり話が通って正直ホッとしている反面、罠なんじゃないかと気構えてしまう。
「!? 何故、連れてきた?」
「この二人がアミュレットの件で町長と和解したいと」
「わかったわかった、お前は持ち場に戻れ」
「はっ!」
俺たちを案内した衛兵は去り、町長と俺たちの三人で話をする状況ができた。
「衛兵、返してよかったのか?」
「お前たちに勝てる兵はこの街にはいない……それより、どうやって出てきた?」
「勇者ジースが俺たちからあの腕輪──アミュレットを奪還した、それだけの事だ」
「馬鹿な!? ならば何故お前たちは生きている!?」
「何故って、あのアミュレット結構簡単に他の人に移せるし」
「えっ!? そんな……」
町長は頭を抱えている。
ガトーレに言われた本当の事が余程ショックだったというか、完全に想定外だった様子だ。
「だが、勇者様が俺たちを倒してアミュレットを手に入れたのは本当だ。元仲間だったのをいい事に言い包めたとかそういうのではなく、完全に決別した形で正々堂々と勝負した結果での事」
「……何が言いたい?」
「要するに、今のあのダンジョンのボスは勇者様だし、町長さんの思惑通りより強い奴にアミュレットが移ったわけだ」
本当はジースなんかよりも俺たちの方がはるかに強いんだがな。
「つまり、お前たちが生きている事以外は私の計算通りに事が進んでいると……?」
「そういう事だ。それに、俺たちが生きていて町長さん的に何か困る事でもあるのか?」
「それは……」
「私たちに復讐でもされるとでも思った?」
「違うのか?」
復讐してもなあ。
ダンジョン事情から察するに、元を言えば俺たちがやり過ぎたのも悪いわけだし。
「復讐するかは町長さん、あんた次第だ。俺たちの要求を飲んでくれたら水に流してもいい」
「……何が望みだ?」
「俺たちに出ている指名手配を解いてくれ。アミュレットも今じゃ勇者のものだし、あれはもう必要ないはずだ」
「町長さんも、何時の間にかいなくなった私たちに何時襲われるかを心配する生活より、今ここで話をつけた方が安心して暮らせると思うんだけど」
さあて、町長はどう出るか?
「わかった、お前たちが何か悪事を働いていたわけでもないし、指名手配を解除しよう。ただし……」
「この街から出て行って欲しいんでしょ? 大丈夫、銀行の貯金さえ下ろせれば明日にでも出ていくから」
「……助かる」
「どの道、もうこの街でやる事も無いからな」
こんなにすんなりと話が通るとは。
駄目元だったが、やってみてよかった。
「最後に、これはお願いなんだが、ダンジョンの秘密はできれば漏らさないで欲しい。他のダンジョン街にも迷惑がかかるからな」