六話:初実戦と拾い物
〈〜こんこらむ:2〜〉アイビス①
女性。17歳。身長170cm。武器は短剣。最低限の防具と黒いマントを装備している。また、身体のあちこちに短剣を隠し持っている。戦闘スタイルは短剣術と体術。本で調べた暗殺者の戦闘術をベースにしている。
魔法はほとんど使えない。魔力の流れを感じ取る事が苦手な為である。
私とアイビスはゴブリン討伐の為、ダンジョン近くの森に来ていた。
基本的にゴブリンは森にはいない。探求心が強い為、よくダンジョンから出てきて森に入っていく。そして森を荒らすのだ。
その為、ギルドでは依頼を出して冒険者たちに討伐をお願いしている。だが、ゴブリンはとても弱く素材としての価値も低いので、『駆け出し冒険者の為の依頼』という認識が強い。
ダンジョン周辺の森の中を、周囲を観察しながら探索していく。ここしばらく雨が降っていないせいか、地面や草木が若干乾いていた。
しばらく歩いていると、視界の隅に僅かに動く何かを見つけた。
「⋯⋯いた。見つけたぞ」
「⋯⋯本当ですか?」
「ああ。あそこだ」
そう言って私は、遠くに動く黒い影を指差した。
褐色の肌。手には棍棒。頭部には一本の角。
間違いない、ゴブリンだ。しかもちょうど三体。これは運がいい。
「アイビスには、今からあそこにいるゴブリン三体を倒してもらう」
「⋯⋯ほ、本当に、私なんかでいけるんですか〜⋯⋯?」
アイビスはとても自信なさげに聞いてくる。
「大丈夫だ。後ろから奇襲をかければ相手は混乱する。仮に気づかれても、その辺の石でもぶつければ怯ませられる。そのスキに一体を倒すんだ。倒したら止まらずにすぐ二体目に行く事。相手が油断した瞬間が勝負だからね」
「⋯⋯わ、分かりました。まずは一体。仕留めたら二体目⋯⋯」
私の説明を聞いて、ぶつぶつと独り言のように内容を復唱するアイビス。⋯⋯私もすぐに援護に入れるように準備しとくかな。不安だ⋯⋯。
[ゴブリン]
この世界における下級の魔物の代表格の一体。個体差もあるが大きさは約160cm前後。通常個体は棍棒を武器としているが、上位個体ともなると剣・槍・弓矢等を装備している事もある。さらに常に3体以上で行動し、戦闘時には連携を見せる事からも、彼らの知能の高さが伺える。
素材となるのは主に角。また、彼らが装備している武器は駆け出し冒険者ならば十分実用可能な強度である為、まともな武器が購入出来ない時のその場しのぎ程度には役に立つ。過信は出来ないが。
駆け出し冒険者たちに実戦の恐ろしさとドロップ品の大切さを教えてくれるにふさわしい、ちょうど良い強さの魔物だ。
アイビスは、ゴブリンたちに気づかれないギリギリの位置まで隠れながら接近し、黒マントの下から短剣を二本取り出した。⋯⋯ん? 二本?
そしてタイミングを見計らい⋯⋯、ゴブリンたちの後方へ一気に飛び出していった。
ゴブリンたちがその足音に気づき慌てて後ろを振り返るが、もう遅い。アイビスはすぐさま左手の短剣を投げつけ、最後尾のゴブリンの首に直撃させた。そしてゴブリンの胸に右手の短剣を突き刺す。ゴブリンは一瞬で絶命した。
「一体目。次⋯⋯!」
アイビスはゴブリンを蹴り飛ばし、二体目に襲いかかる。二体目のゴブリンは混乱しながらも彼女めがけて棍棒を振り下ろすが、アイビスは半歩横にずれてそれをかわす。同時に黒マントの下から左手で短剣を取り出し投擲する。短剣はゴブリンの首に直撃し、さらに彼女が追撃をかけゴブリンの胸に右手の短剣を突き刺す。二体目も問題なく仕留められたようだ。
「二体目。次⋯⋯!」
アイビスは止まる事なく三体目のゴブリンの位置を確認し、突撃をかけた。残った最後のゴブリンは恐怖に駆られたのか、その場から逃げ出そうとする。が、アイビスはすぐさま右手の短剣を投擲しゴブリンの左足に当て、転ばせた。そしてすぐにゴブリンに取り付き、足に刺さった短剣を抜いてゴブリンの首を掻き切って仕留めた。
アイビスは、無事に初陣を勝利で飾ったのだった。
私は、戦闘を終え放心状態になっていた彼女へ近づき声をかけた。
「お疲れ様」
「⋯⋯⋯⋯」
声をかけるが、反応が無い。まるで燃え尽きたかのようにぼうっとしていた。
私は、より大きな声で呼びかける。
「おい!」
「ひゃうっ!」
身体をビクッとさせながら、アイビスはこちらを向いた。よほどびっくりしたのか、身体をぷるぷると震わせていた。
「⋯⋯お疲れ様。初めての実戦、なかなか良かったよ」
「⋯⋯ぁ」
目線を合わせながら労いの言葉をかけ、彼女の頭を優しく撫でる。表情から緊張が取れていき、身体の震えも収まっていく。
「⋯⋯ありがとうございます、師匠ぉ⋯⋯。わ、私、頑張りましたぁ⋯⋯っ」
アイビスは次第に涙を流し、泣き出してしまった。私は戸惑いながらも彼女を胸に抱き寄せ、泣き止むまで頭を撫で続けた。
「⋯⋯すみません。ありがとうございました、師匠⋯⋯」
ひとしきり泣いた後、ようやく落ち着いたアイビスは、申し訳無さそうに謝ってきた。
「⋯⋯気にしなくて良いよ、私たちは仲間なんだから。遠慮は無しでいこう」
「⋯⋯はい」
なんでもない事を伝えると、アイビスはどこか嬉しそうに頷いた。
「さて。君の戦利品を確認しようか」
そう言って、私はゴブリンたちの死骸があった場所を見る。そこにはゴブリンたちの姿は無く、代わりに魔石が落ちていた。
魔石は魔力が結晶化したものだ。これを利用する事で魔法装備を作ったり、魔力を回復したり、魔法を使ったりする事が出来る。
ちなみにこの魔石をギルドに持っていくと、言い値で買い取ってくれたりする。冒険者の半分以上はこれで生計を立てていると言っても過言ではない程だ。
今回手に入れた魔石はなかなかの大きさだ。一つあたり300フロンいけば上々だろう。
「ほら。これが君の初戦利品だ」
そう言ってアイビスに三つの魔石を渡す。
「こ、これが、私の⋯⋯?」
「もちろんだ。君が倒したんだから、当然だろう?」
「⋯⋯ふふっ。そうですね」
アイビスはとても嬉しそうだ。
⋯⋯と、その時。
「⋯⋯あれ?」
アイビスが、何かに気づいた。
すぐそばの木の下に、光る何かがあった。拾ってみると、それは黒光りする鉱石のようだった。
「⋯⋯何でしょうか?これ⋯⋯」
「⋯⋯分からない。とりあえず持って帰ろう。武器屋にでも持っていって鑑定してもらおう」
「そうですね」
初めての実戦の戦利品は魔石が三個とよく分からない鉱石一個。
まずまずの結果にホクホクしながら、私たちは街へと戻っていった。
今回はいつもなら二話に分割するところを一話にまとめました。さらに新しい試みとして、戦闘シーンに入る前に魔物の解説を入れてみました。
主人公の背が高くて、よく頭を撫でられている為に分かりづらいですが、アイビスは意外に長身です。個人的に背が高い娘が好きなのです。
これからも、気づいた事があれば改良していきます。




