二十九話:ユニ
〈〜こんこらむ:24〜〉ユールニース
シルヴェニア国の雪山に僅かしか咲かない希少な花。
茎が分厚く、かなり深くまで根を張る為寒さに強い。種から蕾をつけるまではおよそ300〜320日。『気温が氷点下』『雪が蕾よりも下』『日光が出ている』などの条件が揃った時、黄色がかった花を咲かせる。
花言葉があり、意味は『追憶』『あなたを忘れない』。
次の日。
「名前、決めたよ」
「⋯⋯」
「お、ついに決まったんですか?」
「うん。一晩中ずっと考えて、やっと決まった」
私は、じっと見上げる少女の前でしゃがんで、目線を合わせる。
「ここにいる間、君の名前は"ユニ"だ」
「⋯⋯⋯ユニ」
「そう。シルヴェニアの雪山にしか咲かない希少な花、《ユールニース》から名付けたんだ。⋯⋯気に入ってくれたら、嬉しい」
「⋯⋯うん。⋯⋯うれしい」
少女・ユニは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
あぁ、良かった⋯⋯。
「おぉ〜。良い名前ですね。ユニちゃん、よろしくね」
「⋯⋯うん。⋯⋯よろしく」
「えへへ〜、ユニちゃん、良い名前だね♪」
良かった。皆も違和感なく受け入れられたようだ。自分の名付けの素質を、もう少し信じてみても良いかもしれない。
◆◆◆
「じゃ、ギルドに行ってくる。アイビス、フェリシア。ユニの事をよろしくね」
「分かりました!おまかせください!」
「はーい。まっかせてー♪」
「⋯⋯⋯⋯(ぎゅ)」
「⋯⋯ん?」
外に出ようとしたところで、ユニが服を掴んできた。
「⋯⋯どこ、いくの⋯⋯?」
「ちょっと仕事に行くだけだよ」
「⋯⋯⋯いっしょが、いい⋯⋯」
⋯⋯あぁ。これは、懐かれてしまったか。
うーん⋯⋯。
狙われてるかもしれない以上、外出には危険が伴うのだが⋯⋯。
「⋯⋯⋯(ふるふる)」
ユニは、服を掴んだまま震えていた。
⋯⋯無理矢理離すと、精神的にダメか⋯⋯。
となると、連れて行くしかないか。ファルシアとフェリシアが側にいれば、大丈夫か⋯⋯?
「⋯⋯分かった。じゃあ、一緒にいくか」
「⋯⋯(こくり)」
「⋯⋯師匠、良いんですか?」
「ああ。ユニの心も気遣ってあげないといけないからな」
「⋯⋯なるほど。師匠は優しいですねっ♪」
「その分、私たち全員で護らないといけない。フェリシア、ユニを優先で護るように。良いね?」
「はーい!」
「ファルシアも、周囲の警戒レベルを強化して」
「分かりました。おまかせください」
「⋯⋯じゃあ、行こう」
やれやれ。外出するのも命がけだな⋯⋯。
私たちは、ユニを連れてギルドに向かう事にした。
ウチの主人公は、心の機敏には意外と敏感です。