もふもふのせかい
もふもふ。
もふもふはせいぎ。
わたしはもふもふしたものがだいすき。
ここはわたしがだいすきな、もふもふしたものであふれている。
あれ? あそこにおいてあるのはなんだろう?
わたしはかけよってみてみる。
これはもふもふの『みみあて』だ!
わたしはそれをひろってつけてみた。
うん、もふもふしていてきもちいいな。
ほっこりえがおになる。
あれ? あっちにみえるのはなんだろう?
わたしはかけよってみてみる。
これはもふもふの『コート』だ!
わたしはそれをきてみた。
うん、もふもふしていてきもちいいな。
ほっこりえがおになる。
あれ? こんどはなんだろう?
わたしはかけよってみてみる。
これは『アザラシさんのぬいぐるみ』だ!
わたしはそれにだきついてみた。
うん、もふもふしていてきもちいいな。
ほっこりえがおになる。
ピンクいろの、もふもふのせかい。
だいすきなものにかこまれているけれど、なぜだかすこしさみしくなった。
おかあさんにあいたい。
おかーさーん!
よんでみるけどおかあさんはきてくれない。
なんだかふあんなきもちがあふれてきて、なみだがでてきた。
わんわんっ!
とおくからいぬのなきごえがきこえた。
そちらをみると、まっしろいちいさなもふもふのいぬがこちらにかけよってくる。
あれは『ぽめた』だ!
わたしはすぐにわかった。
ポメラニアンのぽめた。
わたしはぽめたにかけよってだきしめた。
あたたかくてもふもふしていてきもちいい。
わたしがないているのをみて、きてくれたんだね。
わたしはまた、ほっこりえがおになった。
薄暗い部屋。
『ピー』という電子音が響き渡った。
「残念ですが……」
白衣を着た男性が、静かにそう告げる。
傍らに立つ女性は目の前のベッドに泣き崩れた。
女性が泣き崩れたベッド。
そこには一人の少女。
お気に入りの『みみあて』をつけてもらい、
お気に入りの『コート』を着て、
お気に入りの『アザラシのぬいぐるみ』を抱くようにして、
ほっこりとしたえがおで静かに眠っている。
少女の枕元。
そこには1枚の写真が添えられていた。
ピンク色のランドセルを背負う女の子と、小さなポメラニアン。
1人と1匹が、仲良く笑っていた。




