番外編:アリシアはおせっかい
コミックス二巻本日9/9発売されましたー!
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「ヴィンセント、気付いていますか?」
夜、アダムもヴァネッサも珍しくいない二人きりの夕食時に、アリシアが切り出した。
「何がだ?」
アリシアの問いにヴィンセントが問い返す。
「アダムさんとヴァネッサさんですよ!」
アリシアがパンをちぎりながら言う。
「アダムさんはヴァネッサさんに気があって、ヴァネッサさんはアダムさんのこと満更でもないんじゃないかなと思うんですけど」
「ああ……」
ヴィンセントは近頃のアダムとヴァネッサの行動を思い返す。
確かにアダムはヴァネッサがタイプのようだ。ヴァネッサからしたら孫どころの年齢差ではないが、見た目が若いから関係ないだろう、きっと。
それにそれを言ってしまえば、自分と今のアリシアの歳の差も引っかかってしまう。
「ヴィンセント?」
「なんでもない」
なんでもアリシアに絡んで考えてしまう思考が読まれたら困ると思い、ヴィンセントは思考を切り替えようと頭を振った。
「それで……私たちが協力したらどうでしょうか!?」
「……」
アリシアがキラキラした瞳でヴィンセントを見てくる。
「二人はきっかけがあればうまくいく気がするんです。きっかけを作ってあげれば」
「……」
ヴィンセントはそう言った行動が苦手だ。そもそも苦手でなければアリシアとの仲だってこんなにこじらせてはいない。
しかしアリシアがやりたいというのなら協力は惜しまない。ヴィンセントは大概アリシア馬鹿だった。
「いいだ――」
「やめてよね」
ヴィンセントがアリシアに返事をしようとしたそのとき、玄関が開いてヴァネッサが現れた。
「ヴァネッサさん!? 今日は遅くなるんじゃ!?」
「予定が変わったの」
ヴァネッサがつかつかと歩み寄り、アリシアのパンを奪って口に頬張る。
「あとで私にも食事ちょうだい。余ってるでしょう?」
「ええ、ありますけど……」
「お腹ペコペコなの。どこかの馬鹿のせいで」
ヴァネッサはプリプリしながら部屋に戻ろうとしたは、ふと踵を返してこう言った。
「あの馬鹿とくっつけようとしないでよ! いいわね!」
「は、はい!」
ヴァネッサの勢いに飲まれてアリシアが返事をすると、ヴァネッサは満足したのか部屋に向かった。
「……何かあったようですね」
「そうだな」
いいことではなさそうだが。
しかしアリシアは嬉しそうだった。
「喧嘩するほど仲がいいというやつですよヴィンセント! そうですよね!」
ヴィンセントはどう返事をするべきか逡巡したが、アリシアがそう思うならいいか、と思い、「そうだな」と返事をした。
「これはやはり私たちがなんとかしなければ……!」
さきほどくっつけようとするなと言われたばかりであるとヴィンセントは気付いたが、やはり「そうだな」と返事をした。
基本アリシア優先のヴィンセントはアリシアが楽しそうならそれでいいのである。
「余計なことするなって言ったでしょうが!」
後日そんなヴァネッサの叫びが聞こえるのもご愛嬌だ。




