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【書籍化】前世、弟子に殺された魔女ですが、呪われた弟子に会いに行きます【コミカライズ】  作者: 沢野いずみ
番外編

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番外編:デートを教えて

コミカライズ本日より、マンガがうがうより配信開始!

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詳細は活動報告にて!

よろしくお願いします!



「で、デートというものに行ってみたいのですけど!」


 ある日、ヴィンセントがいない日に訪問すると、アリシアに懇願された。


「え? うん、行って来たらいいんじゃないかな……?」


 ヴィンセントなら大喜びでついていくだろう。

 しかしアリシアはもじもじもじもじとしている。


「その、そうなんですけど……でも、私田舎育ちで、デートというものを知らないのです……」

「うん?」

「だから」


 アリシアはアダムの顔を仰ぎ見た。


「デートについて教えてください!」

「……はい?」


 デートについて教えてくれと言われても、デートはデートだ。


「ええっと、異性が仲良くなるために出かけるもので……」

「そういうのはわかります! そうじゃないです! というかアダムさんわざと言ってますね!?」


 少しだけいじわるしたのがバレてアダムは舌を出した。


「ごめんごめん。つまり、実際のデートがどんなものか見てみたいってことでしょ?」

「そうです! うちの実家は田舎過ぎて、デートと言えばお花畑かぐらいに行くしかなかったので!」


 お花畑。ずいぶんメルヘンなデートである。

 でも逆にそれがいい気もする。


「お花畑でデートしたら?」

「嫌です! ヴィンセントに田舎者だと思われます!」


 今更ヴィンセントはそんなことを気にしないし、アリシアと一緒ならどこでも嬉しいだろう。

 しかしアリシアは真剣だ。


「はぁー……わかった、わかったよ。でも賢者様にはアリシアちゃんから説明しておいてくれる? 俺、馬に蹴られたくないから」


 断りもなくアリシアとデートをしたらどうなるか、想像するだけで恐ろしい。なにせあの賢者様の片思いは二百年ものなのだ。アリシアへの執着心は人一倍だ。


「? 何でわざわざヴィンセントに言うんです?」


 アリシアが首を傾げた。


「何でって……自分の彼女が他の男と出かけたら嫌な気になるでしょう?」


 そこまで言って、ようやくアリシアは何かに気付いたらしい。


「あ……ち、違います!」


 あたふたと手を振り否定する。


「アダムさんとヴァネッサさんのデートを見せてもらえればと……!」


 ――自分と誰だって?

 アリシアの言葉を理解するのに少し時間を要したが、理解すると同時にアダムは「え!?」と大きな声を出した。


「待って、何で俺とヴァネッサさんが!?」

「だってアダムさん、好きでしょう?」


 アダムはギクリとする。


「ボインなのが!」

「……うん?」


 想定外のことを言われて気の抜けた返事しか出てこなかった。しかしアリシアはそれをどう受け止めたのか、妙に爽やかに微笑んだ。


「いいんです、わかっていますから。アダムさんはボンキュッボンなお姉さん系が大好きなんですよね」

「待ってアリシアちゃん! その言葉だと語弊がある!」


 それではまるでアダムが女性を体目当てで選んでいるように思われる。

 アダムはただ好みで言えば大人っぽい女性が好きなだけで、ボインであるのが絶対条件ではない。


「いいんですよ、どうせ私は幼児体型ですから」

「アリシアちゃん結構根に持つね……」


 あの服選びでセクシー系は無理だと言ったのをまだ覚えているらしい。でも本当に似合わなかった。止めた自分を褒めたい。


「話は戻しますが、ヴァネッサさんとデートするときに付いて行っていいですか?」

「いや、デートの約束すらしてないんだけど」

「え!? まだしてないんですか!? 何してるんですかアダムさん!」


 責められた。どうして。


「ヴァネッサさんみたいな魅力的な女性、すぐに相手ができちゃいますよ! はやくアタックしないと!」

「はあ……」


 そうは言われても、さりげなくアタックしているつもりでも、軽く流されるのだが。

 デートの申し込みなど受け付けてもらえない気がする。

 どうするか――


「いいわよ」


 悩んでいたら背後から声が聞こえた。


「わっ、ヴァネッサさん!」


 後ろを振り返るとヴァネッサが立っていた。てっきりいないと思っていたが、部屋にいただけのようだ。


「いいわよ、デート」


 聞き間違いではなかった。ヴァネッサがデートを承諾している。


「え、え? い、いいの?」

「いいわよ。何回言わせるのよ」

「だ、だって、いつも軽く流されるのに……」


 デートに誘ったことはないわけではない。何度か一緒に出掛けないかと声をかけるも、さらっと流されて終わっていたのだ。


 ――でも急に何で?


 アダムが疑問に思っているのがわかったのか、ヴァネッサがアリシアをちらっと見る。


「勘違いしないでよね。この子のためよ」


 この子、とアリシアを指差した。

 自分のため、と言われてアリシアはパアっと顔を輝かせた。


「わ、私のためですか、ヴァネッサさん……!」

「そうよ。だからしっかり学んで賢者様を悩殺しなさいよ」

「はい!」


 デートは悩殺する場ではない。

 そうツッコミたかったが、期待に胸を膨らませているアリシアには言えなかった。




◇◇◇




「これが噂の『かふぇ』!」


 アリシアが瞳を輝かせる。

 そのアリシアの目の前にはこぢんまりした可愛らしいお店がある。店の外にいても、香ばしいコーヒー豆の香りがする。

 デートの定番。カフェだ。


「見た目からして可愛いなんて、さすが『かふぇ』!」

「ほら、お客様の邪魔だから入るわよ」

「はいっ!」


 ヴァネッサに促されて、アリシアが扉を開ける。


「いらっしゃいませー!」


 可愛らしい制服に身を包んだ女性が出迎えてくれる。


「ふわあ、店員さんも可愛い……」

「三名よ」

「かしこまりました」


 店員さんに見惚れていたアリシアの横でヴァネッサが素早く店員に人数を伝える。そのまま席に案内された。


「メニューが決まりましたらまたお呼びください」

「はいっ!」


 アリシアの緊張ぶりに、店員はどこか微笑ましそうにしながらその場を離れた。


「メ、メニューがよくわかりません……」


 メニュー表を開いたアリシアが目を白黒させていた。


「ウィンナーコーヒー……ってなんですか?」

「コーヒーの上にホイップクリームが載ったやつよ。苦いの苦手よね? それにしといたらどう?」

「た、確かに……これとチーズケーキにします!」

「私はエスプレッソとチョコケーキにするわ。あなたは?」

「あ、俺はカフェオレとオレンジケーキ」


 ヴァネッサに促されてアダムはようやく口を開いた。というか口を開くタイミングを失っていた。

 ヴァネッサがさきほどの店員を呼び、メニューを伝える姿を見ながら、おかしい、デートのはずなのに、と考えていた。


「いやおかしよ。おかしい」

「どうしました? アダムさん」

「なにかあった?」


 二人が不思議そうな顔をするのでアダムのほうがおかしいのではないかと思えてくるが、やはり普通におかしい。


「いやアリシアちゃん何で普通に同じ席にいるの!?」


 そう、これはデートという体なのだ。なのに、ヴァネッサの隣にアリシアがちょこんと座っている。


「え……ダメでした?」

「いやダメかダメでないかで言ったらダメだよ! デート中のカップルの間に入ったらダメだよ!」


 これではただ友人とお茶を飲みに来ただけである。


「いいじゃない。こういうデートもあるわよ」


 ヴァネッサがテーブルに置いてある水を口に含んだ。


「ダブルデートって言うのよ、覚えておきなさい」

「ダブル、デート……?」

「そう、二組のカップルが一緒にデートするの。賢者様がそこにいると思って楽しみなさい」

「な、なるほど……! そんなデートの仕方が……!」


 アリシアが驚きながらも感心している。

 ダブルデートは特殊なデートなのでぜひ賢者様とは普通のデートをしてほしいと思うアダムである。


「ヴァネッサさん、そりゃないよお」


 アダムがテーブルに突っ伏しながら言うが、ヴァネッサはどこ吹く風だ。


「アリシアにデートを教えるならこれで問題ないでしょう」


 そう言ってプイっと逸らされた顔は少し赤い気がしたが、きっと気のせいだろう。


「二人だと恥ずかしいじゃない……」

「何か言った?」

「なにも」


 ヴァネッサが小声で何か言ったが聞こえなかった。本人が話してくれないので、もう聞けそうにない。

 アダムははあ、とため息を吐いた。


「少し期待したのになあ……」


 がっかりである。

 アダムだってこっそり期待していたのだ。ほんの少しだけ。ちょっとイチャイチャできるかなとか、ほんの少しだけ思っていたのだ。

 これではただ友人とお茶を飲みに来ている図だ。


 デートとは……一体……。


 はあ、とアダムがため息を吐いたとき、店員が注文した品を届けに来た。制服はやはりかわいい。あれが販売していたらアリシアに着せたい。


「何ジロジロ見てるのよ」

「え?」


 店員の制服を眺めていたら、目を吊り上げたヴァネッサが視界に入った。


「あの女の子をジロジロジロジロ。まさか、気があるんじゃないでしょうね?」

「え? まさか! 違う違う! 制服がかわいいなって見てただけだよ!」


 まるで浮気した夫のように問い詰められ、アダムは慌てて否定した。実際見ていたのは制服である。

 アダムの否定にヴァネッサは女性店員をとアダムをチラチラ見比べて、チョコケーキに手を付けた。


「ややこしいことしてるんじゃないわよ……」


 小声でそう漏らしたヴァネッサの頬が心なし赤く見えるのは気のせいだろうか。


 ――もしかしたら、チャンスがあるかもしれないな。


 アダムは途端に気が良くなった。

 デートと言うにはどうかと思うが、なかなか得るものがあった。


 そして何より、ここにヴィンセントがいるのを想像しながらはしゃぐアリシアが楽しそうなので、まあいいか、と笑みがこぼれた。


 結局アダムはアリシアが幸せそうな姿を見られたらそれで満足なのだ。

 注文したオレンジケーキは少し酸味が効いていた。




 後日「ダブルデートしましょう!」と言われたとき、さすがにお断りした。



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[一言] ヴァネッサさん可愛い
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