焼肉とキシリトールガム -3-
「僕と、付き合ってください」
「嫌です。ほんとに」
僕がやぶれかぶれに行った、3回目の告白も、あっけなく散った。
しかし、毎度ながらこんなことでは、へこたれていられない。
「どうして、駄目なんですか?最近はファッションにも磨きがかかってきて、女子達から褒められます」
そう食い下がると、彼女は欠伸を一つこぼした。
「ふぁぁ……まあ、ちょっと見た目は良くなったかもね」
「や、やった!……と、ということは……」
「”と、いうことは” って何よ……」
彼女が僕のことを睨みつける。
でも、そんな表情ですら、僕は美しいと思ってしまう。
「あのぉ、次は僕の何が駄目なんでしょうか……?」
「そうね……」
彼女が僕の顔をじーっと見つめるので、僕は快く見つめ返した。
「顔が冴えないわね、あんた」
「顔……ですか」
「うん、顔。冴えない顔の男が彼氏なんて嫌だわ」
彼女は僕の顔を見るのを辞めて、スマホを弄り始めた。
「それって、整形しろってことですかね?」
「いや、なんかもっと”僕は何でもできます、頼りになります”って顔がいいのよねぇ……
アンタって家に引きこもって、ゲームやったりアニメばっかり見てそうな顔してる」
僕は胸を矢で射抜かれる思いだった。
彼女が言ったことは完全に図星だったのだ。
そうか、彼女は僕にもっと自信を持ってほしいと思っているわけか。
きっと、あれだ。
アニメとかである、危機を乗り越えた主人公に対して、
”お前、いい顔をするようになったな”
みたいなやつ。
きっと、あれが必要なんだ。
さあ、どうする?僕。
僕は一生懸命、頭を悩ませた。
僕の脳細胞よ、この先一切頑張らなくていいから、今だけ頑張って。
そうすると、素晴らしいアイデアが雷が落ちるが如く、僕の脳裏に強烈に降ってきた。
よし、これだ。
これしかない。
僕は咳払いをコホンと一度すると、彼女の目を真っすぐと見つめた。
「では、僕と一緒にバンジージャンプをしにいきませんか?」
「はぁ?一人で行ってきなよ。馬鹿じゃないの?」
そうして、彼女は去っていった。
恐らく、スカイダイビングが正解だったんだろうなぁと、僕は後悔した。。
焼肉とキシリトールガム -3- -終-